夏はやってくる

「珍しいな、誰と行くんだ?」

「ん・・・?ああ、勘違いだ。俺たちが行くんじゃなくて、仕事上必要なだけ。」


いつもの様に仕事をしている春希にいつもの様にじゃれつくかずさ

日本でも変わらず、究極の公私混同を続けている2人

今日もまたお馴染みの光景

仕事中でありながら、2人の時間でもある夜に春希に話しかけることも、変わらないまま


その時、画面に映った一覧表を見たかずさだが珍しくその内容が理解できた上に、さらに珍しいことに仕事よりもプライベートに関係しそうなものだったから春希にきいてみたくなった

まさか春希が自分をわざわざ人混みに連れ出すと思えないし
二重に行かない理由があるのだがら
自分が選択肢に入るわけもなく
かといって理由もなくわざわざそんな一覧表を見る必要もないから
となると仕事かはたまたどこかのワガママな病人がまた無茶言い出したのかと思えたのだ

まさか、あいつが、というのもなくはない
そういうイベント事は外さないのはいつだってあっち

また、連れ出されるということもあるのかもしれない
あの頃はいつもそうだったから
今はそんなシンプルにいきはしないだろうとしても。

だが、春希は仕事に必要なデータと予想外の返答
突然やってくる無茶振りではないらしい

「仕事?これが、か?」

世間一般の仕事というものをよく知らないかずさではあるが、さすがにこれが仕事ではないと予測できた
できたのに、答えは違うらしい

「難しく考える必要はないって。もし、同日の夜に近くでコンサートやったらどうなる?」

「・・・防音が効いてるはずだから、関係ない気がするんだが。」

「コンサート中は、な。だが、行き帰りは混雑するし、わざわざ近くで大規模なイベントをやっているところに別のイベントを開くのは集客にもよくないし、関係者との折衝が大変にもなる。手間を増やすだけで、リターンは少ないってこと。」

「ああ、そういうことか。」

先ほど、図らずも自分でも簡単に予想できたようにただでさえ人が集まるところにコンサートでさらに人を集めれば問題をわざわざ作りに行くような真似、といえるだろう

「かずさも機会があれば行ってみるか?」

「・・・あたしがいくと思っているのか?」

「いや、分かっていた。人ごみ嫌いでしかも有名人になってさらに人ごみ嫌いがましたお前だし。ただ、まぁ、方法はいくつかあるぞ?」

「ん・・・、遠慮しておくかな。あたしの領分じゃない。」

馬鹿なことをと他者は言うかもしれなくても
どうしてもそう思ってしまう
自分から望んで行くのは できない

「そう、か。」

それを春希も分かっているからそれ以上は言わない
呪縛に囚われているのは かずさだけじゃない

「あたしが夏の風情を楽しむように見えるか?」

「春夏秋冬よりもクーラーや暖房の方が重要度が高いのは知っている。」

「そういうことだ。」

“そういうこと”の意味に込められたものがどうであれ
かずさは元々あまり行く気がない上に
その資格がないとも思っている

そんなかずさがもし行くとすれば
それはかずさを連れ出す人がやってきた時

その時がくるかなんて誰にもわかりはしなくとも―――


夏は やってくる


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夏の朝 少し寒い朝

ウィーンの朝は寒い

海沿いの平野部とは違い、川沿いの山間部に位置しているという地形もだが

緯度も高く 夏といっても猛暑とは縁遠い所である

当然、、最低気温も低く

何せ7月なのに15度を下回ることさえあるし、基本的に20度以下である

そんな涼しいなんて表現では済まなくて、朝は冷え込むというレベルのウィーンの朝

その朝を二年の間過ごしてきた春希と 七年も過ごしていたかずさ

夏の朝は冷え込むことを知る2人

だから、冷え込む朝は

半袖では寒さを感じるような朝の冷気は

どこかウィーンを思い出させる

風の冷たさと 静寂の中の自然の音が

かつて2人がいた 2人だけでいたあの頃を

思い出させる

そしてその記憶は必ずしも幸せに満ち足りていたものではない

朝、夢から覚めて 隣を見れば

涙にぬれた頬が目にはいることは

よくあることでなくとも、珍しいことでもなかった

東京を離れた際に払った代償と痛みが

2人を異国の地でも 苛み続けた

特に、夜は 夢は 逃げられるものじゃない

夜が明けて 日が昇りて

目が覚めたころにやってくる朝の冷たさが 

夢の余韻を引きずる2人の心を

より冷たく突き刺すから

2人でそれを必死に暖めあったことを

2人とも忘れられるわけがなくて

朝の冷たさは 夏の朝の冷たさが

そんな狭くて 幸せで 苦しかった 世界の記憶を

思い出させるんだ

けれども、それは変化の兆しでもある



「あたしたち、何か変われたかな?」

「変わってる途中なんだと思う。行きつく先がどこかはまだわからないけど、変わり始めていることは確かだ。」



だって、今、ウィーンを振り返っている

過去を見つめている

この二つが紛れもない変化の印


「変化、か。」

それでも 思ってしまう

罪は変わることなどあるのだろうか?

「そりゃ、変わらないものもある。俺たちには変えられないものもある。」

春希もそこは理解している

過去を変えることなどできはしない

それによって生まれた罪も

その罪の意識も・・・



「今朝は、・・・冷えるな。」

窓から入ってくる冷気が 

冷たく乾いた空気が

変わらないものが 変わっていないんだと

冷酷に告げているようで

あの、涙がこぼれた朝の様で


「寒いか?かずさ。」

だから、春希がかずさを抱き寄せる

変わらない、温め合う方法

「少しだけ、だ。あっちよりは寒くない。・・・不思議だけど、な。」

最後は独り言かのようにポツリと漏れた本音だが

春希も同じことを感じている

少しだけなんて、強がっていることも

それでも、ウィーンほど冷たく突き刺さってこないことも

両方を 春希も 感じている

「多分、それこそが変わってきているからなんだって。」


感じ方は変わる

世界が変わることと一緒に

逃げるからこそ、罪の意識は膨れ上がり 霞むことはない

だからといって、向き合ったからと 消えるものでもない

寒い朝を知った原因を作ったのは ほかでもない2人

「最低の純愛」がもたらしたこと

夏が来たのに 夏が来ているのに

2人にとって特別の季節が来ているのに

朝の寒さを知ってしまった2人は

もう、その特別さに身を任せて

2人だけの季節に浸ることなんてできない

あの頃の様にいつも隣で互いだけを考えて

互いだけを見ていた頃には

その頃の2人とは 変わってしまったから

それでも、手に入れたものを守るために

これからもこうしていくために

春希はかずさを抱きしめ

かずさは春希を抱きしめ

夏の 冷たい 朝を―――



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The Day After 46

「で、叶えたい望みはあの時口にしたものと変わってないのか?一番の望みはそれじゃないくせに、いいのか?」

「そりゃわたしの一番の望みは違うよ。でもそれを叶えるってどういうことなのか、あなたが一番知ってるでしょ?前にもそれは言ったはずだよ、わたしにそんなことできないって。」

この部屋に2人の声が響く

ここ、冬馬・北原邸のリビングのソファーに

3人がここに座った途端、かずさは一切の躊躇なく切り出した

あの帰国した春から口にしなかったことまでも口にして

秋の間は春希もかずさも日本にいなくて、こうして会うのは数日ぶりどころか数ヶ月ぶりなはずなのに
それを全く感じさせないような口ぶりで

2人と1人の話し合いが始まった

そのかずさに対する雪菜の答えは同じよう
時間を感じさせず 戸惑いもせず
答えを隠すことなくハッキリと返す

2人が自分のとこに来た時に
その表情をみた瞬間に
来るべき時が来たことに気づいたから

覚悟なんて、2人よりもよっぽど早く決めていたから

返す言葉に迷いも躊躇いもあるはずない

ただ あの時は触れずにいた部分にも触れて、言葉を返す

「きいたさ。でも一番は変わらないんだろ? 雪菜、お前の望みは春希の子供を産み育てること。それは変わってないはず、それこそ4年前からな。」

次に言ったかずさのセリフもやはり直球そのもの

今まで、夏までは敢えて触れずにいて、冬馬曜子からも触れるなと言われた部分

そこにさえかずさは触れた

触れなければいつまでたっても表面的なお話しにしかならないのだから

「・・・否定したとして信じるの?」

「信じられるわけないだろ。じゃなかったら婚約してるはずがないだろうし、雪菜ならそこまで考えていただろうし。」

「それならわざわざ聞かないでよ。それに、そこには前提条件が必要でしょ?」

「いるか?」

「いるよ!片親で色々とあったかずさが言っても説得力がないくらいに!」

対する雪菜だって負けず、率直に遠慮なしに答える
かずさに対して普段なら言わずにいた部分でさえも口にして、真っ向からぶつかっていく

「うちの母親があまりに常識はずれだからってのはあると思うけどな、そこは。少なくとも、一般的な母子家庭とは家はかけ離れてるとは思う。」

「なにもなければ、わざわざその選択肢を選ばないんだから、意味もなく自分から望んでわざわざそうなろうとなんてしないんだから、事情はそれぞれあるんだよ。そしてその事情に子供は影響を受けるのは避けられないじゃない。どうしたって父親がいない、知らないっていうのを背負わせることになるじゃない。もしかずさがそうでなかったら、あなたを知らずにいたのなら、あなたのいう選択をしてたかもしれないよ?けど、かずさを見てきたからそんなことできないよ!かずさ、あなたなら逆の立場になったとき、自分を重ね合わせた時、それをできたと思うの?」

「・・・分からない。でもしないとも言い切れない、あたしは不幸じゃなかったから。」

「それは結果論でしょ。高校の時のあなたにそれを言って聞くと思うの!?」

「思わないな、そりゃ。それでもあたしはその可能性は捨てなかったろうし、捨てられなかったと思う。・・・そこに可能性がある限り、あたしはそれを捨てることなんてできやしない、それくらい雪菜だって分かってるだろ。」

「確かに、あなたはそうかれもしない。でも、わたしには、わたしだけでなんてできない、できないの。」

2人は言葉をぶつけ合う
思いのまま、想いのまま
そこに春希が口を挟む余地なんてなく
静かに話し合いを聞くだけ
春希ができることは今はない

「それなら、望みはなんだ?なんだってわざわざあたしたちに連絡をよこした?」

「理由、知ってるでしょ。前にも言ったよね、わたしはあなたの師匠になるって。今のあなたたちじゃこれから先、絶対にうまくいかないもの。」

「また随分と不幸な予言だ。」

「だってあなたは家事を一切できないもの。それでうまくいくはずがないじゃない。あなたは母親に成れるの?かつてあなた自身が望んだような母親に。」

「・・・そんなの無理だ。あたしも昔は人並みの母親を望んだがあたしはとてもそうなれそうにはないからな。」

「そうでしょ?だからわたしが必要なんじゃない。」

「でもそれは雪菜が見つけた自分の役割で、言い訳でもある、あたしたちのそばにいるための。」

「そうだよ、言い訳だよこんなの。でも、必要なのも事実じゃない!それにこれは春希くんのためにも言ってるんだからね?かずさのためだけじゃないんだから。」

「それだって分かってる。でもそれならあたしから春希を連れて行けばいい、違うか?」

「それができたらとうの昔にそうしてるよ!できなかったんだから仕方ないじゃない!それにそうしたらかずさ、あなたはどうなるの!?あなたは独りで生きていけないでしょ!?」

「・・・実際、どうなんだろうな、あたしは。結局、そうなったことがないからなぁ。いつも誰かがあたしを助けてくれてたから。」

「そうしないとかずさは生きていけないからでしょ。あなたに自活なんて不可能だもの。そして、もし可能だとしても、できるようになるために、あなたがその才能を捨てることになるかもしれないなら、周りがそれを惜しんで手助けすると思う。」

「才能、か。本当にそんなものあるかも分かんないけど。」

「なかったらあんな風にコンクールで賞をとれないでしょ。あなた以外にもそれを求めていた人は沢山いるのに。」

「じゃあ、あたしがピアノを捨てたらどうなると思う?」

「わたしにそれを聞くの?あなたがもしピアノを捨てるなら、それは春希くんのため、そうでしょ?それを止めたのは誰だったと思ってるの。だから捨てたところで、こうしてあなたたちが2人でいることに変わるわけじゃない。・・・そこだけは自信もって言えるよ、それだけは。」

「・・・・・・お前、それ覚えてたのか?」

「ちゃんと記憶しいてるかと問われると怪しいけど、あの時の事はおぼろげに覚えてる。少なくとも、あなたがバカなことしようとして止めたことは確かだって。」

「雪菜が雪菜であるように、あたしはあたしってわけか・・・。」

「でもだからといって変わらなくていいってことじゃないからね。あなたが何も変わらなければ先はうまくいかないんだから。そうなった時、私は放っておけないもん。だってそこに私の居場所があるんだから。」

「結局、話はそこに戻るわけか。でも、あたしは北原かずさ、だぞ?それを変える気はない。」

「それを変えたくなかったら、変えなくて済むように努力する必要があるってこと、分かってる?あなたにある選択肢は二つ。どっちを変えるかを選ぶのはかずさだからね。」

「・・・ほんと、強情な奴だな、雪菜は。」

「それだけはあなたに言われたくないよ。誰よ?7年も遠くから願い続けていたのは、奏で続けていたのは。」

「それこそ今も歌い続けているやつもいるみたいだけどな。」

「「・・・・・・。」」

しばし、視線で互いを射抜き合いながら
その心の揺れを量り合う
揺れないと分かりながらも
その余地を探してしまう

「・・・結局、雪菜もあたしも相手が崩れることを見越してのセリフってことか、業が深いことだ。」

タメ息のように吐き出されたかずさのセリフは場の空気を揺らす

ここにいる三人誰もが抱える危うさがそこにある
とごか自己犠牲に似たエゴが
三人の中にあり
その特異さが三人をまた結びつけてもいる

「どっちかってことでしょ。私が関わらなければあなたたちが倒れるし、私が関われば私が倒れる。その選択を相手が倒れないように選びあっている、でもそれは自分の願いのために、望みのために、自分勝手に選んでるって言いたいんでしょ?」

かずさは無言で同意する
まさにそういうことだ
そしてだから話は動かない
願いは簡単に他人に動かされるようなものじゃない

簡単に動くなら、こうしてここにいない

こんな物語は生まれちゃいない

「余地があるなら、私はそこに入り込むよ?それが嫌なら入り込めないようになってよ。あなたが願った『母親』になってみなさいよ。」

「言いたいように言ってくれるな、ほんと。」

「そのために今日あなたたちはここに来たんでしょ?私の考えを、想いを、願いを全部言わせる為に。」

「そうしなきゃ繰り返すことになるからな。また再びの冬が来るかと思うと、な。」

「何かが変わらなければまたになるだろうってわたしも考えた。だから、こうしてあなたと意見をぶつけ合ってるんじゃない。」

「なるほどな。・・・・・・なら、最終確認だ。雪菜は変えたんだな?」

「うん、変えたよ。だから、あなたは何を変えるのか、決めてください。」

「・・・わかった、答えを出しておく。」

互いに 互いの瞳から目をそらさず 言葉を交わす

互いが揺るがないことを確かめ合いながら

意志を伝え合う

雪菜は変えたことを伝えて

かずさに何を変えるのかを問い


かずさは変える意志があることと

何を変えるかに対して考えがあることを応え


春希は静かにかずさの隣で

話し合う2人を見守る


三度目の冬がやってくる―――――


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和泉千晶流の

「・・・お願いがあるの、冬馬さん。」

「なんだ言ってみろ?」

「今度講演で海外に行くことになってて、その間だけ、春希を貸してほしいの。」

「・・・・・・。」

「その、いつもみたいに身の回りの世話をしてくれる人ってことじゃなくて・・・。」

「・・・なくて?」

「思い出を・・・。あたしが唯一愛した人との思い出とその証が欲しいの・・・。」

「・・・・・・・あのな」

「分かってる!冬馬さんは賛成してくれるわけがないってことくらい。でもね、何も言わずに連れていくのは悪いと思って。春希をいきなり数が月の間連れて行ってしまう前にせめて伝えるのがあたしの誠意だと思って。」

「・・・いや」

「許してくれとも分かってくれとも言わないわ。言えるわけがないもんね。だから、これだけは言わせて。」

「・・・」

「ごめんなさい・・・・・・・。」

千晶はそう言って頭を下げる

その頭を見下ろしながら かずさが口を開く

「和泉、一つだけいいか?」

「私に答えられることなら、どんなことでも。」

「それ、去年同じことを母さんがやったぞ。」

ため息交じりにかずさが言った

その瞬間 冬馬家のリビングの時が止まり

「あっれ~~~、うそーーー!」

千晶の驚きの声が響いたのだった



「なんだってとち狂った芸術家のやることなすこと同じなんだろうな。それともお前と母さんが単に思考回路が近いからなのか?」

「折角、春希がいないタイミングを見計らってここまでやったのに~。あたしの計画が実行する前にパーだなんであんまりだ!」

「あんまりなのはお前の頭の中だろ、本当に。」

「一か月も前からネタのために春希の今日のスケジュール調べて、春希と何かある風を装ってみたりして、下地を作ってたのに~。」

「暇なことで。」

「ホワイトデーだって別のことで返してもらうってことでやせ我慢したのに、どういうことだ~。」

「馬鹿だったってことだろ。」

「考えてみれば、冬馬さんいじりするならこの手は外せないしね、気づいとくべきだった~、くっそ~~~。」

「無駄に演技力発揮してたところ申し訳ないが、むしろ演技くさ過ぎて怪しいことこの上なかったぞ。」

「いつもと違う雰囲気で攻めればいけるはずだったのに~!」

「そのせいであたしはなんのデジャヴかと思ったわけだが。」

「いや、まだだ、まだ終わらんよ!来年またチャンスは来る!」

「さすがに三年連続で気づかないと思うのか?」

「いや~わかんないよ~?春希をもっと巻き込めばさすがに平静を保てないだろうし、分かっていても人は疑ってしまう生き物だよ~?」

「それもやめとけ。去年母さんが巻き込んだ時も春希が途中であっさり真相ばらしたぞ。」

「くわぁ~!春希は分かってない~!」

「分かってないのはお前だ、和泉。そんなことに協力しようとすれば後で俺がどんな被害にあうか。」

「うぉ!春希、いつの間に。」

「おかえり、春希。」

「ただいま、かずさ。全く人のいない間に何しに来たかと思えばろくでもないことしてやがったのだけは分かった。」

「あたしが何したっていうのさ~!」

「去年のお義母さんと同じようなことだろ?」

「納得いかない~!せっかく人がサプライズでエンターテイメントを提供したのに~!」

「エイプリルフールにかこつけて騙しに来て、他人の家庭に波風立てようとしてただけにしか見えないんだが。」

「お芝居の練習くらい、いいじゃないか~!」

「それが本音か。」

「そんなこと言ってると夕飯やらんぞ。」

「ごめんなさい、あたしが間違っていました、だから夕飯ください。」

「「変わり身早過ぎるだろ」」

「背に腹は代えられんし、お腹と背中がくっつきそうだし~。悲壮感出すために今日はご飯抜きだから、お腹空いてさ~。」

「「お前、馬鹿だろ」」

「だから、大盛り、超特急でよろしく~。」

「はいはい、今から用意するから待ってろ。」

そう言って台所に春希は立ち それをリビングから見守る千晶

そしてその千晶を横目で眺めながら

どこの馬鹿がエイプリルフールなんてものを作ったのやらと思うかずさであった



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春という季節に

「今の、何の匂いだ?」

「この時期だと梅か桃だろうけど、桃の花かな、多分。」

「そうか。」

ふとした匂い

仄かに甘い 花の匂い

それを言葉少なく確かめあって

季節が変化していることを知る

だからこそ、多くを語り合うことはない

だってこれからくる季節は少し、2人には重い

何度も経験したが故に心に防波堤をはるかのよう、身構えてしまう

花の香りだけじゃない

例えば日差しの強さや影の長さだとか

時折、少し暖かめな春風が吹く日が混じることとか

コートやセーターが少し暑く感じる時がある日や

日中にエアコンを点ける必要がないくらいだったりと

いくつもの出来事が変化を感じさせ、それゆえに2人を身構えさせる

だってこれからくる季節は

春、だから

出会いと別れの季節ではい

別れて一人になる季節

家族と別れて2人だけの世界になった季節

春は希望じゃない

いつだって、孤独な季節





そんな孤独な、2人だけの季節を過ごしてきたけども

今は、こうして小さな世界から戻り
東京の街を歩いている

初めての再会の季節になった冬を越えようとしている2人に

また、春が

孤独な季節がやってくる

それを感じてしまった時の不安

言葉少なくしか語れない

語れるはずがない

それでも季節は移ろいゆく

確かなスピードで、淡々と、確実に。

冬はもう終わり 春がくる

その瞬間をこうして2人で、

春希はかずさと

かずさは春希と

東京の片隅を歩く

初めての 2人での東京の春

「季節変わる、な。」

「ああ、新しい季節がくるな。」

そして、季節の変わり目を感じることさが、2人を刺激する

今までと、この二年とは違う
懐かしい季節の変化
置いてきた記憶の中の月日を思い起こさせる変わり方

それがまだ春になりきらない冷たい風よりも2人を震えさせる

「何か変わるかな?」

「変わらないこともあるだろ。」

だから、何があっても変わらないものを確かめ合って

道を進む

季節が流れ、景色が流れ

それでも変わらずに

2人で歩いていくのだ

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プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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