The Day After 31

「あっちではどういう状況になってんだろうなぁ?」

「さあ。・・・でも、そんな緊迫したものにはならない、と思う。雪菜の目的が対決じゃない気がするから。」

布団を並べてぼんやり天井を見上げながら
男二人での会話
昔はよく雑魚寝した二人だが
こうして、布団並べては珍しくて
そして、とても懐かしい
もう何年ぶりになるのだろうか

そんな状況で語られる、もう一つの舞台での話
武也としては心配もあったが、春希は正反対に落ち着いた答え

「・・・そうか。」

だから、よく分かってるなという言葉を不用意に言いそうになった武也は
あわてて言葉を飲み込んだため返事が少し遅れる
変わらずに春希が雪菜のことをそうやって理解しているのに
ままならない現実が口惜しくさえある

だから、どうして、と思ってしまう

だけど、それは恐らく、冬馬の母親だって思ってたことで
そう考えれば、どちらかであり
そのどちらも、なのだが
結局、最後に春希が下した選択は春希らしい、といえるかもしれない
そこまで春希分かってしまうからこそ
こうして、また頭を並べてられているのだろうけども


ただ、どうしても一つだけ聞いておきたいことがあった
前の時はそれを留保したが、今なら聞ける気がする

「なぁ、春希。前から聞きたかったんだが、お前、ギター止めたんじゃなかったのか?」

それだけはどうしても知りたかった
あの日、唯一春希が残していったものがそれだったから
つまりは捧げたんじゃないかって
せめてもの身代わりに置いていったものだったはず
ギターとギターを弾く北原春希っていう存在を
唯一、小木曽雪菜においていったんだって思っていた

だけど、こうして日本に戻ってきたとき、こいつはギターを奏でていた

「・・・ああ、止めたつもりだった。・・・だったんだけど、な。」

「いや、もう一度やり始めた理由は分かるからいい。ただ、止めてたかどうか聞きたかっただけだ。」

武也はその答えで充分だった
止めた理由ももう一度奏でた理由もやっぱり春希だからだ
ギターだけは小木曽雪菜が冬馬かずさから唯一得たものなのかもしれない
それを知りたかった、というより確認を取りたかった

少なくとも雪菜ちゃんも俺もそう信じていたし
それは春希への信頼に繋がっていたもの
そして、あの時のたった一つのつながりだった

冬馬かずさにとってピアノがそうであるように
雪菜ちゃんにはギターと歌がそれ
それほどまで深いものになっていた、と思う

春希がこうして日本に、俺たちの世界に返ってきたというのは
同時に雪菜ちゃんも世界に出てきたからだ
そんな風に繋がっていて 繋がり続けている
そんなどうにもならない3人がこうして また いる

(春希は答えを出した、だがそれで終わるわけじゃないってのが、な。)

こうまで 『あんなにどうしようもなくなっちゃったら、これから辛いよね』 が続くなんて
言った当人でさえ思いもしなかっただろう

そんなことを考えてしまう 武也だった



~*~



「ねぇ、かずさ、聞いていい?」

「・・・何をだ?」

かずさにとっては自宅なのに、状況はアウェイなのもあり、嫌だと言いたいところだが
さすがに春希にいうようには言えず、聞き返す
それに言ったとしても雪菜に対しては効果ないだろうから。

「で、本当のところはお料理を覚える気はあるの?」

その件か、と思う
しかし、単純にYESかNOで答えても仕方ない

「なんで料理なんだ?」

だから二つの意味を込めて聞いてみる

「それが一番頻度が高いでしょ?それに生活には必須だもの。」

「まぁ、そうかもしれんが、こっちでは料理しなくてもなんとでもなるんじゃないか?」

「あのねぇ、栄養のバランスって知ってる?」

「それくらい知ってる。」

「ならいいたいことも分かるよね?」

そんなやり取りはするも、敢えて核心の部分には触れていない2人
もう一つの意味については答えていないまま、会話が進んでいく
雪菜は料理が得意であり、苦手なかずさ相手にするその話は
表面的なものでしかなくて
それをなんとなしに感じられるから
依緒も朋も、どう口を挟んでいいかわからないままである

「・・・料理、ねぇ」

「そ、お料理。」

「検討しておく。」

「かずさにしては前向きだね。」

とても前向きには聞こえない回答だが、雪菜はかずさの心情をちゃんと読み取る

「それで前向きなんですか・・・。」

だが、読み取れるのは雪菜だけで
横で聞いていた怖いもの知らずな朋はとてもそうは考えられないので思わず口を挟む

「前向きだよ~。かずさの場合、やらないならやらないでおしまいだもん。」

「・・・。」

そして雪菜がかずさを解説をするのに本人は不満があっても
言ってることは的確で否定できない為、ムッツリと黙り込むしかない

「で、せっちゃんが教えるの?」

「朋も教えてみる?」

「・・・え、遠慮します。」

朋としてはさすがに2人は気まずくて仕方ないし
もともと、教えるのは得意でないのもあって
さすがにそれは、である。

「でも、私、一人じゃ限度があるんだけどなぁ、かずさが一人でも練習してくれればいいんだけど、どうせしないだろうし。」

「どうせとか言うな。」

形だけの反論をするかずさ

「じゃ、やるの?」

「だから、前向きにだな」

「そういうとこ、春希くんに似ないほうがいいよ?」

「ほっとけ。」

詭弁で逃げるなと言う雪菜に、はいはいと応えるかずさ
一般的な会話にすればそんな内容なのだが
そうは言わない2人だし、会話を聞く人たちにもらしさを感じさせて

「ああ、確かにその言い回し春希っぽいよな。」

だから依緒も口を開いた
それしかいえなかったが、それは言えた
つまりは、口が出せるのは春希のことや、昔からのことしかなくて
“今”にいえることがなくて、一人置いていかれてるようで・・・

「あのなぁ、あたしは春希ほど、酷くないからな。」

そんな依緒の心情も複雑さも気にとめず
かずさは思ったままに反論する

「春希くんだからね・・・」

「春希だからな・・・」

「北原さんですからね・・・」

そんなかずさの主張に同意するかのような三者の答え
実は、この場にいないながらも、場の雰囲気作りに貢献していたりするのが春希でもある
逆に言えばこのメンバーになるのは春希がいるから、だ。

雪菜だけでもかずさだけでもならない
春希がいたからで、それが 始まり

だからこそ、ままならない

それをよく理解している雪菜は話題をそこからズラし
元の話に戻すことにする

「かずさだって春希くん以外に食べさせたい人、いるでしょ?」

「もしかして母さんのことか?それはない。」

「なんで?親孝行になるんじゃない?」

親孝行したいはずであるかずさの心情を読み解いて
雪菜は固有名詞を避けつつも、そう提案してみるものの
かずさの反応は芳しくない

「文句しか言わないからな、あの人は。自分が料理できないことを棚に上げて、あたしが料理つくろうものなら、似合わないことをしてとからかわれることから始まり、味や材料にいたるまであらゆる文句をつけてくるに決まってるから、それだけはない。」

「・・・え~と。」

他の三人とも思ったことは当然、大人気ない親子、だ
そして、それが冬馬親子の日常でもある
二年の間でさえ変わらなかったのだから
今さらそれが変わるはずもなく、変えるはずもない

だから、手料理を食べさせて それに舌鼓を打つ親子なんて
ありえないのである

「・・・親子の愛情表現でそれぞれだよね。」

雪菜が何のフォローもなっていないことを
昔ながらの困り笑い顔で言う
それが、依緒と朋には 懐かしくて
また、二人の言葉を奪ってしまう

「それに、親孝行ってなら、そういうのよりピアノでしたいからな、あたしは。」

「それこそ、親孝行にならないような・・・。」

「そうか?」
「さっきまでの話を聞いてたら、どう考えても孝行にならないでしょ。」

「だが、冬馬であることは示せる。それに当たり前の孝行をこの期に及んでなんて、な。」

「・・・そう、わかりあってる、ね。」

「そりゃ親子だからな。」

「そっか、そうだよね。」

七年前とは違うなんて当たり前
今さら過ぎる感想
だけど、実感してしまう
あれから意地を張り合っているものの、それでも普通の親子になったことを語るかずさがいる
初めて雪菜はそれを目の当たりにした気がするからだ

(やっぱり違うこといっぱいあるよね)

何度目かの確認をしてしまった雪菜は
心の中でつぶやきながらも
それを受け入れるための心構えを作る
そうして、今を受け入れて
初めてそこから先へと進めるから

だから、こうして、枕を並べて

少しずつ、知っていく

互いの知らない時間を確認しあうのだ



~~~~~~~~~~~~~~~~~~
とても時間がかかってますが
四苦八苦とモチベーションの問題だったりします。

推敲前のものなので表現等変かもしれません、すみません。
ですが、とりあえず形にしたのでUP致しました。

それとアニメ版の話は聞いてますが、どうなるやら。
楽しみなような怖いような。

なにせWAのアニメ版は原作を知らないほうが楽しめたと思われるので。
というか、原作ってどこまで原作と言えますかっていう定義への挑戦にも感じました
名前とだいたいのキャラの外見が一緒ならいいんでしょうか。
タイトルは同じですが、時代とか主人公とか一部の登場キャラをいじったら
もうそれ、別物といえるんじゃないかなぁ~と。

とにかくWA2ではそれは避けていただきたいところです。

それはともかく、ペースが明らかに鈍化してますが
更新は続けていく予定です。
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プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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