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The Day After 34.5

「・・・というわけで、これが今回のメインだ。」

麻理は会議室にメンバーを集め、次号の目玉となる自分がしてきた取材の成果を聞かせた
小春だけは、分かっているので、いつもの雰囲気
だが、他のメンバーは驚きの表情のまま、言葉を発せないでいた
あまりに唐突な発表についていけなくて。

そんな彼らの驚きを助長させたのは
耳から聞こえてきたいくつもの声音
かの有名ピアニスト・冬馬かずさの声と冬馬曜子の声
この2人が同じ場所にいて直接取材をするのは現状不可能だったはずなのに
何故か、2人が普通に会話している声がある

そしてそれ以上に驚かされたのはもう一つ混じっている声
かつては日々当たり前に聞いていた、あのどこか生真面目な声
風岡二世である、北原春希の声
その彼の声がかずさの声と言葉に重なって絡まって・・・


その意味を理解したときに、誰も言葉を発せなくなっていたのだ・・・



The Day After 34.5



「・・・・・・おい、風岡。お前、いつから知っていたんだ?」

一番初めにかろうじて声を出せたのは、やはり浜田だった
低く重い声は、迫力があるものだったが
本人はわざとそうしているのではなく、かろうじて声を絞り出した結果である

「お前達から話を聞いてすぐにピンときた。」

「・・・何で、すぐに分かったんですか?」

日頃はどちらかというと落ち着きのある木崎だが
今はまだ動揺を抑えきれていない

「一回目に北原に記事を書かせたとき、色々と知る機会があったからだ。実はあの時、学校側から参考資料をもらっててな。それを見れば分かることがある。そして、こいつを見て、かつての記事を見れば、よく分かるさ。」

そう言って麻理は一本のDVDを出す
それを見た小春は表情をゆがませる
こんな所でまで、それを見ることになったからだ
それは、小春にとっては高校三年生を思い出させる
あの日々を嫌でも。

「それ、何ですか?」

でもそれを知らない鈴木が尋ねる

「これは附属の学園祭で北原と冬馬がバンドを組んでライブをやった際の映像だ。」

「え?北原と冬馬かずさがですか?」

松岡が目を丸くする
かつて春希がかずさと個人的な関係があったなんて一度も示唆したことなかった
むしろ、遠い、元同級生みたいな立ち位置のはずだった

「ああ、北原と冬馬ともう一人の三人で、だ。とりあえず、見てみろ。」

そういって、セットし、トラック8を呼び出す
ついでに、春希が初めて書いた記事がのっているかつてのグラフもご丁寧に手元に広げる
これで、材料は揃った

音が流れ始めて、映像が
映し出されれば、答えは簡単に出せるはず


だって、それは皆にとっては衝撃的だが、一目みて分かるはずだから。


その中にいる、北原 春希は顔こそ春希だが
その表情も雰囲気もまるで別物
どこか、影のある根暗っぽい堅物という雰囲気がまるでなく
ギターを弾きながら精一杯カッコつけて
自分に酔っていて
他の二人からからかわれて、心配されて
そんな北原 春希がいる
自分たちが見たことのない春希がいる

それはつまり、春希にとっても他の2人が特別で
つまりは冬馬かずさとの関係も特別で
だからこそ、あれほどの記事を書けたということに繋がる
母親をさえ笑わせるほどのものを。

「うそ・・・、ってことは私、もしかして・・・。」

そして、鈴木はそれを知らなかったが故に
無自覚に地雷を何度か踏んでいたことに気づいてしまった
同時にその時春希がどんな表情をしていたか、思い出せない
多分、自分たちには歪んだ表情を見られないよう隠していたのだろう
そう思い、胸が痛んだ

そして、木崎も松岡も、どうして春希が冬馬かずさの話をしたがらないのか理解した
言われなければ気づきはしなかったが
思い返してみれば、その話題になるとまるで避けるかのように引いてみせていた
それと気づかせず、でも必ずトーンダウンして
その話題に乗ることはなかった

そして、浜田は・・・いえる言葉がなかった
そんな馬鹿なというのと、ああなるほどというのが同居して
言葉にならない
自分の中にそれを的確に表せる言葉がないから
あの日、既に自分を他人と言ってなかった理由が
こんなにも深く、そこまでのものだなんて
誰が想像できただろうか
でも、だからこそ先方が直接オファーするのであり
自分には分からないことでも北原には通じていたのだ
なればこそ、あそこまでのものが出来上がったのだ
気づけた可能性は自分にはあった
あったのに、気づけぬまま、北原は発った
そう思えば、何を言えるだろうか・・・

「だからこそ、この記事に繋がる。そして、その後の二冊の取材の成果も、それゆえだ。悔しいが私でさえ、北原の取材には足元にも及ばなかった。」

麻理が悔しげな声音で語る
この間の取材も決してうまくいったとはいえないレベル
直接取材できたことは他よりはマシではあるが
引き出せたものはそう多くはなかった
いくら知識で冬馬かずさという人間を知っていてもそれだけで
実際にその姿をその声をその想いを引き出すには
まだまだ足りない
春希と比べたら足元にも及ばない
かずさに対する理解に絶対的な差があると同時に
その春希が相手側にいるプレッシャーとやりづらさ
その結果、取るに足らないものしかできなかったという気がしてしまう

決して、他の取材から劣っているわけではない
でも、完成形を知っているために自分のがまだまだだと分かってしまうのだ

だが、他のメンバーはそれどころでなくて
それぞれが理解したことがあってそれゆえに何もいえないまま
思い返せば、二年前の冬には兆候がいくつもあった

そして春先の春希は何かに取り付かれたように全てを終わらせていなくなった
その全ての理由が 答えがこうして示されたから。

また、小春は小春で口を閉じたまま、映像に見入っている
映し出される北原春希と、かつて見た春希が重なり
自分の時間が巻き戻るような
でも、この前に見た、冬馬かずさの隣にいた春希とも重なって
自分だけのなにも変わらずおいて行かれたような
奇妙な感覚に捕らわれている

そんな小春の表情を見た麻理は、やはりかと思う
前からそのような素振りがなくはなかったが
ここにきてようやくそれが気のせいではないことを理解した
杉浦小春にとって北原春希がただの先輩というだけではないらしい
彼女の横顔がそれを語っており
この手の話に鈍い麻里ではあるが違和感があった理由に気づいた
自分とさして変わらない、ということだ

だが、気づいたからといって言えることがあるわけでもなく
皆の表情を眺めながら
静かに見守る

そのため、それから言葉を発することのできたものはいなかった
ただ音と映像だけが流れ、みな、それを黙ってみているだけで
結局、麻理はそのまま解散にした
これ以上は仕事にならないという判断からだった



~*~


「すまんな、杉浦。」

麻理は小春を休憩スペースに連れ出し、つくなり謝罪を始める
その状況そのものが自身にとって懐かしくも痛をも伴うもで
自分の進歩のなさが感じてしまうとしても

「何がですか?いきなり。」

つれてこられた小春はいきなり謝られても何が何やらである

「今回の仕事、思ったよりもお前に酷なことになったみたいで、な。」

「・・・何故ですか?」

「お前と北原、単に知り合いなのかと思っていたが、それだけじゃないみたいでな。」

「先輩と後輩ってだけでしたよ、別に。」

もし、本当にそれだけなら、先ほど詰まったり、返事が遅れたりするはずはないのだが

「無理するな。先ほどの表情は明らかにそれだけじゃなかったぞ。」

「・・・。」

麻里の指摘に小春は返せる言葉はなかった
ただ、小春としては謝られても困るのはある
自身の感情を言い表す言葉が見つからなくて
それが一番の戸惑いであり
それに対して謝罪されても、というのはある

「私も進歩してないものだ、かつて北原にもこうして謝罪したことがある。」

「え?」

だから、気持ちの整理をしようと思うところに、また聞き流せない話がくる
春希のことが関係ない、という訳でもないのだから。

「あのDVDだがな。あれは北原がここでアルバイトしてた時に、冬馬かずさの記事を書くため、学校に取材した際に学校側から送られてきたものでな。だから、それまで私は北原と冬馬かずさは単なる同級生だと思っていた。」

「・・・。」

「ところが、本当はただの同級生どころか、誰よりも理解者だった。それを知らなかった私は同級の強みを生かした取材を、とやらせた。そのせいで一度目はただの提灯記事でな。」

「・・・それで?」
「もちろん私はボツにした。そして二度目の記事を書いてきた。その時に何があったかは分からない。だが、何かがあったのだろう、見違えるような素晴らしい記事だった。それがあれさ。そして、その際に送られてきたのがDVDでな。で、私は悔いて謝罪することになったんだ。・・・因果なことだな。」

「・・・勝手に因果にしないでください。」

「そうだな、すまない。」

そして、会話は途切れる
お互いに言葉が見つからない

麻里はやはり因果を感じてしまうのだ
でも、それを素直に小春は受け入れられないのも分かるから
かける言葉がないのだ

そして小春も色々と複雑過ぎて、言える言葉がない
よりにもよってそんな所まで
似てなくても、と腹立たしくさえなる
彼にもだが、何よりも自分に。
何故か彼の行く道をなぞってしまい
その度に複雑な思いを抱えてしまう自分に。
そして悩む時間だけ、彼を忘れられなくなっていく自分に・・・。

2人の女性は何を言うまでもなく
静かに珈琲を飲むのだった


~~~~~~~~~~~~~~~~~~
長くなって分割して再びくっつけてをしたので、なんだか時間がかかりました
34の後すぐに、34.5を公開する予定でしたが、結局時間かかってしました。

そしてとうとうきましたね、10月
ペース上げてく予定です。
あと、次は35が春希とかずさの今回の件に関するもの、35.5で開旺社のあと4人シーンになりますね。

一週間ないに何か公開して行けるようになればと思います。

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次も楽しみです

面白いです(≧∇≦)b
アフターストーリーはいつも気になるんですよ。
次も楽しみにしてます

追伸
小春のアフターストーリーも出来ればもっと読みたいです
お願いします
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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