The Day After 35.5

「次、北原に会うときどうしましょうかね?」

「どうもこうも・・・、何を言えばいいか分からん。」

「・・・私は謝りたいよ。」

「どうだろうな。何を言っても今さらな気はする。」

行きつけのバーで四人
さきほど聞かされた衝撃の事実に
仕事は適当に切り上げてここにやってきて
飲みながらも酔いは感じられないまま こぼしあう

松岡の問いに応えた浜田だが
実際には答えになっていない
むしろ、それは浜田自身ききたいことだ
そして、鈴木は何よりもかつての自分がいった軽口を後悔していて
木崎は、今さら何が言えるやらと思ってしまう
過去のことをわざわざほじくるのもという考え

「でも、なかったことにはできないですもん。」

自分の言った言葉の致命さに、なかったことにはできない、鈴木
憧れの同級生なんてレベルじゃなくて
もっと深くとてつもないものが眠っていた
それを知ってしまった

たがらこそ、それを知らないまま思わず言ってしまった言葉は
どれだけ春希に突き刺さったことか
そんなことも今さらで 今さら過ぎるけれども、どうしてもなかったことにできない

「よくよく考えれば最初っから普通の同級生なわけがなかったんだよな。」

記事のインパクトが強過ぎて
それを何故書けたのか浜田も失念していたし
みなもそうだった
麻里だけが理解してたので
わざわざそこを皆の前で突くはずもなくだから、他は気づかぬままになって
そのまま北原の記者としての能力として評価されることになっただけ
事情を知る人たちは 曜子も麻理も当然春希も何も言わないから
そのまま、次へとつながり
最後の仕事へとなっていった。

この四人が気づかぬままに

「確かに、いくら北原でもあれだけの記事をかけるのはよく考えればおかしかったですね。」

いくら春希がすごくて、それをよく知る木崎だが
思い返せばヒントはあった
でも、それを見過ごしてしまっていた

「それに、北原から冬馬かずさの話って、思い返せば一度も聞いたことないですよね。」

何度かその話をふった松岡だが、返ってきた反応が思い出せない
なんだかお茶を濁すようなものばかりだった気がする
春希がかずさについて何かを語った記憶がないのだ

「それが答えなんだろうな。」

松岡のといにポツリと返した木崎は
そういうことなんだと思う
簡単に口に出せるような、そんな単純なつながりでなくて
春希の中では、それが息づいていて 続いててだからこそ、だ

「・・・思い出した、一度あいつにこんなこといったんですよ。・・・冬馬に会わせてくれみたいなことを。そしたら確か、あいつはウィーンに連れてってくれればいいですよって応えやがったんだけども・・・それが本音だった・・・んですかね。」

その松岡の思い出した一言は
誰も答えられなかった
多分、そういう気持ちがあったのだけども
でも、それが単純にできることではなかったのだろう

だって例え、昔の恋人だったとして
それで復縁してとなったところで北原がどうして日本を離れたのかが解けない
冬馬曜子が日本にいて、断絶どころか親子関係を取り戻したらしい記事を書いてた以上、少なくとも仲違いしてるわけでもない病気の親を日本において
二人だけで、わざわざ海外に行く理由がない
おかしすぎる
単に転職するだけなら
体面は良くないのは確かだが
顔が繋がってるという点ではメリットがないわけでもないのに
全てを終わらせて何も言わずにいなくなるのはいくらなんでも常軌を外れてる

答えは、そういうことなのだ

かれらは何らかの理由で
日本にいられなくなることをしたのだ

それをしなければならない事情があったということだ

過去においても。だから、あんなに北原は口が重く、お茶を濁し、複雑な反応をするのだろう

そして、だからこそ、かつての自分のセリフが重くのしかかる

彼が、どんな想いでそんな風に返したのか・・・

「それも全部、今さらなんだよな・・・。」

そう、今さら。
浜田自身、そう思ってしまう
既に北原はそういったことの全てを捨ててでも
出ていったのだから
ここも、日本も

いくら戻ってきたとはいえ
それをほじくり返されて謝罪されても
どうにもならないだろうから
静かにその事実を受け止めるしかない
今となってはそれしかないように思う

「何も、できること、ないんですね・・・。」

軽口への償いさえできないことに
鈴木は本当に辛い気持ちになる
何かをするためには、その眠っていた深い部分に触れなければならない
そんなことをできるはずがない
あの北原が、他人においそれとそれを許すはずもない
だから、結局、肝心なことは何も分からないまま

ただ、かつての自分たちの振る舞いと
それにどう北原が返したかというのが朧気なままなのが
心に爪を立てる

それ以外に残ったものは何もない

半端な慰めや同情なんてできるはずもなく

自分たちはただ、受け入れること、それだけしかできない

裏切られた、なんて言えたら、思えたら、楽なのかもしれないけども
何も知らないまま
からかっていた自分たちにそんなことを言う資格なんてあるはずもなく
言ってみたところで、彼は静かに謝罪するだけ
影のあるいつもの笑顔で
自分たちがよく知る、笑顔で
そんな風に距離を感じさせてくれるだけになる

画面の中の北原は画面の向こうのまま

「そりゃ、他人じゃないだろうな。」

浜田はかつて思ってたこと、というか引っかかってたことの答えがでたゆえに、ポツリともらす


「なにがですか?」

「あいつ、前にいいやがったんだよ。あれは一回目のコンサートの後だったんだけどな。冬馬かずさが怪我してるってのを聞いたとき、お見舞いに俺も行こうかって、言ったらなんて応えたと思う?」

「・・・なんて応えたんです?」

「『今は他人にあまり会いたくないそうです』って応えたんだよ。その時、俺は違和感を感じてたんだ、他人じゃないって言ってるようなもんだったからよ。入れ込みすぎじゃないかって思ってたんだが・・・、そりゃ他人じゃないよな。」

「「「・・・・・・。」」」

「最初から、他人じゃなかったんだな。だから・・・独占取材も最初断ってきたんだな。」

「でも、ずっと、元カノってことだけは否定してましたよね・・・。」

「そこら辺もまた複雑な何かがあるんでしょうね。」

推測を重ねていけばいくほど、見えてくる裏側だが
推測すればするほど、中身の見えないそれに恐ろしさを感じ、そこに手が出なくなる
どんなものがあるのか分からないがために

「でも、戻ってきたんですよね。」

「戻ってはきましたけど・・・。」

何もかもがうまくいったから戻ってきた
とは、とても思えない
5年会ってなかったはずの2人が
2ヶ月の間で恋を実らせ
まるで全てを捨てるようにしていなくなった日本に
二年で何もかもうまくいって戻ってきた
なんて、誰が信じられるだろうか
彼らは多分、あの日から何も変わってない気がする
それを変えるために戻ってきたのではないだろうか
その方が、あり得る

そんな戦い始めただろう2人に
自分たち4人ができることはほぼないし
むしろ、自分たちは戦いの相手の1つでさえあるのかもしれない
だからせめて、唯一できることを
静かに受け入れることを
するのが贖罪になると信じてするだけ
それしかできない

そして、そうするために必要なのは
心を納得させるだけで

それが一番難しくもあるから

こうして飲みながら
こぼしあって

受け入れる下地を作っているのだ

もし、次、会うときには
自分たちはどんな顔をすればいいだろうか

どんな顔をしているのだろうか――――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ようやく出来上がった34.5の後半部分にあったやつでした。
途中で長くなるのが予想できたために、こうして分割したのですが、ここまで長くなるとは。お陰で、随分時間もかかり、ようやくこうして挙げることができました。

4人との再会は全員一度とはならないとおもいますし、随所に入れたいところですね。

また、先週のアニメ版はかずさ回過ぎて、書くことがないように感じたので、書いておりません。その代わりこちらを書こう・・・と考えてたのですが、全然関係ないことをしてました(笑)

そんなわけで、35.5話でした
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いつもより早い時刻に更新されたので、びっくりしました。(早くてもアニメの放映後だと思っていました)今夜の話数の放映直前のことについては、前回の更新のコメント欄に書いたのでこちらには書きません。今回のThe Day Afterですが、今後この四人が春希に再会した時のお話を楽しみにしています。個人的には、浜田と木崎は(少なくとも表面上は)冷静に鈴木と松岡は感情むき出しな対応をしそうですね。

修正

脱字の指摘がありましたので、修正かけました。ご指摘、ありがとうございます。

でも、追い出し会やってもらって春希はかなり救われていたと思うけどね。

知っていたら、あの時知りうる限りでの激励ができたかどうか。

そこあたりを春希は伝えてほしいな。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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