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The Day After 36

「私が行きます。」

「相手はコネがある大物のブレーンで、影響力が非常に大きい。それを理解した上でか?」

「もちろんです。」

「・・・鈴木は、納得できたのか?」

「分かりません。」

「リスクは取りたくないぞ、ましてリターンがあるのか分からない状況では。」

「でも、行きたいんです。会ってみたいんです、北原君に。」

「コネが揺らげば、どれだけの損害が会社に出るかも理解してのセリフか?」

「それは分かってます。それでも、です。」

「・・・鈴木が行くメリットを私に説明できるなら考慮できる。」

「大してありません。・・・ただ、私は非難できる立場でもないんです、かつてはを考えれば。だから、そもそもリスクが大してないはずです。」

「・・・やれやれ、それで社会人何年目だか。」

「だってないものはないんですよ。」

「ま、いいだろう。どうせいずれかはそうせざるを得ないしな。」

「ありがとうございます、編集長。そいじゃ、行ってきます!」

そう言って勢いだけはよく
むしろ勢いしかないまま出て行く鈴木を見て
麻里は呆れるやらため息が出るやらだったりはするものの
北原なら大丈夫だろうと思い、送り出した
目の前にいた部下よりも、既にここから去った元部下の方が信頼できる事実に苦笑しつつも。




The Day After 36




「お久しぶり、北原くん。」

「・・・お久しぶりです、鈴木さん。いずれかはこういう機会があるとは思いましたが・・・。」

平日昼過ぎ
春希はこの状況に二重に驚いた
てっきり杉浦が来ると思っていたからということと
二年前と変わらない口調と距離感に

「本当にお久しぶりです。それから・・・。」

「待った、待った。とりあえず、先に仕事だけ全うさせて。あと、できれば玄関から上げてくれると助かるんだけど。」

麻里に直談判して小春から仕事を奪うようにして、こうして春希の前に現れた鈴木は
会うなりそうそうから、すまなそうに謝罪しようとする春希を止め
まずは仕事から取りかかることを提案する
こうすれば、報告する側である鈴木は会話の主導権をとりやすいから
春希に謝罪させなくてすむという計算から

鈴木自身は、自分だけはそれをされる筋合いも権利もないと思ってるために。

それと、こっそりそんな風に生真面目に謝ろうとする春希に変わってないなあ、と思いながら。

「とりあえず、雑誌の出は、初速からかなりいったよ、予想はしてたと思うけど。やっぱりこのネタは強さが違うね~。しかも、今回はコンサートの情報付きだしね!見出しも煽りも抜群だったから、出ないはずがないんだけど。もちろん、反響もかなりあるし、コンサートの問い合わせもかなりきてるから、楽しみにしといて。」

仕事と言いつつも、砕けた口調で
雑誌の売れ行きと反響の大きさを報告する

「そうですか、それは何よりです。問い合わせが殺到とか、後で大変そうですけどね。」

春希は昔からの変わらぬ丁寧さと余計な一言を付け加えて返す

「そんなわけで、また次回も何かあれば是非、よろしく!」

「機会があれば、その時はこちらこそよろしくお願い致します。」

「それで北原くん、あの頃はごめん!」

とりあえず、公的なやり取りをした軽くすませた後、鈴木は即座に謝罪を始めた
出ないと、先に黙って行ってしまったことを謝罪されてしまうだろうし
懐かしさに浸る前にこれだけはハッキリと伝えておきたかった

自分は彼を傷つけ続けていたと思うから。

「・・・えっと何がですか?」

だが、それについて春希に察しろというのが無理だったり

「・・・え?何ってほら、昔はからかってたけれども、まさかそれが・・・。」

「ああ。まぁ、しらなかったんですから、気にしないでください。それよりも、むしろ・・・。」

「それこそ、謝らなくていいから!」

春希が言おうとするのを止める

「でも、何も言わないまま、辞めてしまいましたし・・・。」

「言えなかったんでしょ?それこそ、あたしは何も知らなかったんだから、言えるわけないんだから、いいんだよ。」

「ですが・・・。」

「その代わり、一つだけ聞きたいんだけどいい?」

「なんですか?」

「どうやってそんなに想い続けることができたの?」

「・・・多分、なんの参考にもならないと思いますよ。」

鈴木が何故そんなことを聞いてきたのか、過去の記憶と照らし合わせてみれば何となく分かるものの
春希にすれば聞く相手が間違っていると思ってしまう

そう参考になるはずがない
普通ではあり得ないこと

自分の周りの全てを捨てることと引き換えに、なし得たことなんて

「ま、そうだよね・・・。」

鈴木とて、分かってる
普通じゃないことくらい。
でなければ全てを終わらせるようにして日本を離れる必要なんてなかっただろうから

「そっか、やっぱり簡単なことじゃなかったんだね。」

「・・・。」

普通なら

クリスマスなどのイベントに予定が合わないことが続けば破局の危機がだというのに
5年も会わないまま
相手は自分のことなんか忘れてるだろうなんて思いながらも
想い続けることができるなんて

普通のわけがないのだ

だから、そこはやっぱり自分には理解できない領域であり かけられる言葉はない

「でもってやっぱり単なる同級生じゃなかったんだね、北原くんと冬馬かずさって。学園祭のステージみたよ。」

「え゛?あれを見たんですか?どうやって?ついでにその話題ってまだ続くんですか?」

「麻里さんが見せてくれたよ。それと、どうせなら聞いてみたくて、さ。」

単なる好奇心だけで聞いてるわけでもない
もちろん、仕事としてのもあるけれど
だけど、それ以上に聞いてみたいのだ
2人の過去と、その道のりを
多分、それを聞けるのは自分たちしかいなくて
吐き出せる相手も自分たちしかない気がするから
だから、彼の重荷を少しでも減らせたらと思う
それができる贖罪の精一杯
それさえも余計なお世話でしかなくて
傷に触れてるだけかもしれなくて
結局何の役にも立てず
やっぱり受け入れることしかできないかもしれないけれども
何もせずにそれだけというのを
我慢できずにいて
だから、こうしてつい口に出してしまう
踏み込んでしまう

あの日、黙って祝福して送り出した人間なんて、他にいなかっただろうから・・・

「いや、単に、その高校の思い出づくりにちょっと・・・。」

そんな鈴木の決心とは裏腹に
春希の答えはいつものハッキリしないやつ

「ええ~、北原くんが?それだけの理由で!?」

「そこまで驚くようなことですかね?」

「そりゃ・・・。」

「万年委員長をやってそうなお前には似合わないだろうな、そりゃ。」

鈴木が驚くことだと言おうとしたタイミングに重ねるようにして
発言を重ねたのがもう一人の住人

「だいたい、思い出づくりにバンドって柄か?」

「あのなぁ、かずさ。いきなりそれか?」

「おおお!?」

顔を見せたと思ったらそうそうに自身への揶揄なのに呆れる春希と
あの、冬馬かずさを直に目にしてる上に
こうして普通に喋ってるのをみることへの驚きと
また、噂の当人登場なのにビックリなのとで
いくつもの驚きが重なったことにより鈴木は
素っ頓狂な声を上げた

それにかずさは片耳を押さえる仕草をしながら
誰だこれは、春希の客か?、という顔
それに春希は1つ頷いて

「開旺社時代の先輩。色々とお世話になっ・・・たかもしれない、かな。」

記憶を照合するとあまりお世話になった記憶がなくて
語尾が濁し口調になってしまったりしたが。

「はいはい、どうせあたしじゃ北原くんには及ばなかったよ、どうせ。今でもそうだしさ。」

そう拗ねつつ、視線は冬馬かずさをとらえ続けている

「とりあえず初めまして、冬馬さん。北原くんの元同僚の鈴木です。お仕事でこれからもお世話になると思います、よろしく。」

かずさはそれに軽く表情を動かすことだけでこたえた
自分にはあまり関係ないことと思ってるからだ

「で、春希、昼は?」

「用意はしてあるからちょいと待ってくれ。」

そういって席をたち、用意にいくのを見て鈴木は目を丸くする
春希が用意をしていることもだが
自分をおいて、かずさを優先する春希に
あの、杓子定規で堅物のイメージが見て取れない
お客さんを放って彼女の世話を優先するなんて
でも、春希に言わせればそれが一番、場が安全を保てるためだからという根っこは変わらない根回し安全主義によるもの

かずさはそのまま、椅子に座って昼食が出てくるのを待つ

「え、ねぇ、北原くんが家事やってるの?」

「そうですよー。かずさに手でも怪我されたら、後が大変ですからねー。」

もちろん、そんなのは立て前でしかない
ただ、それをわざわざ鈴木に言う気もないだけ

やはり春希は春希なのである

「そういうものか~。でも、大変じゃないの?ってか北原くんって家事できたの?」

「なに言ってるんですか。俺、元々一人暮らししてたじゃないですか。」

「そう言えばそうだっけ?でも、うちらの仕事だと、家事できてもできなくてもどうせ時間ないからねぇ。」

かずさの乱入により先ほどまでの空気はかき乱され
結局はいつもの空気
鈴木の意識は完全に逸れ
しかもかずさがいるがために昔の話がおいそれと出来なくなってしまう

無自覚に春希を守りながら独占するかずさ

「で、春希。用は済んだのか?」

「ん?ああ、仕事は済んだよ。さっきまで雑談してただけさ。」

かずさはこれでも一応配慮している
春希の仕事の邪魔をするのは本意ではない
春希の仕事は行き着く先全てが自分に繋がっている
それともう一つ
そもそも春希に元がついた理由が理由だから

ただ、日頃そういうことになれないかずさがする配慮は
却って鈴木にとって喋りづらい空気を作る
春希とかずさが雑談を
日頃のくだらなさを超越してるやり取りをしてくれてた方がいくらでも口を挟めたはず

そんなわけで静かな時間が流れる

その間に春希はかずさの昼食の用意を終えてかずさの前に並べ
そのままかずさの前に並べ、自身はかずさの前に座る
いつもの位置

ただ今日は鈴木もいる

「え、ちょ、そっちに座るの?」

まさかの春希からの放置に
思わず言う鈴木

「ああ、気にしないでください。場所だけなんで。」

「いや、そういわれても・・・。」

話にくいなんてレベルでないし、居心地だってよくはない

「かずさのご飯の間だけなんで。」

などと気軽に言っているが
鈴木にしてみれば、ぶぶ漬けでもと言われたような心地

「なんか、あたし、お邪魔?」

「いえ、別にそんなこともないですけど。」

「いや、でも、この状況は辛い。そう色々と。」

多少ずれた方向にも理由があったりもする

「はぁ、そうなんですか・・・?」

「・・・ま、そこら辺を北原くんに理解しろって言ったりはしないけども。でも、元気そうな姿もみれたし、あたしは満足かな。」

後半は半ば独り言のように小声で言う
何せ鈴木の記憶の中にあった、最後の春希の姿はとても酷い姿だった
でも、今の彼は見ていて、不安に駆られることもなく
あの頃とは違うことを感じ取れたので
それだけでも来てよかったと思えた

「ま、これ以上お邪魔しても申し訳ないし、そろそろ帰るね~。」

「ああ、ならお見送りしますよ。かずさちょっと行ってくる。」

「ああ、分かった。」

「え?いや、玄関までで、充分だから。」

「え?ああ、分かりました。」

春希はもちろん玄関までのつもりしかなかったが
傍から聞けば外出するようにしか聞こえないよな、と思い
玄関までなのに声をかけたりしないのが、普通だと思い出し
そんな自分に笑いそうになりながら
鈴木を見送ったのだった



~~~~~~~~~~~~~
ということで早速鈴木さんとの再会シーンでした
まずトップバッターは彼女かなと思いまして
他の三人も順次やりたいと思ってます

それとラストにはちょっと2人の世界と世間の常識との乖離をいれつつ
それを自覚するテイストにしました
少しずつ、今に生きて社会復帰してる雰囲気をってことです
とはいえ、自覚したとことろで2人が何かを改めることはあまりないでしょうけども

そんなわけでお約束のSSでした
アニメは書いたのですが総ボツで、新規に書き直すことにしましたので
もうしばしお待ちくださいませ

次回はコンサート直前の曜子と春希の会話シーン予定です

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今年最初の

新年最初の更新待ってました。こちらも新年最初のコメントをさせていただきます(^_^)。
開桜社で最初に春希と顔合わせするのが鈴木さんだったのは私も順当だと思いました。会話の中で春希と鈴木さんがお互いに対して申し訳ないと思っている事が、相手はそれ程その事を気にしていない事で会話が今ひとつかみ合わないのは面白かったです。かずさの鈴木さんに対する態度はかずさにしては良い方だったのでしょうか?今やどんな事よりもかずさの事を優先する春希の生活スタイルは鈴木さんでなくとも初対面の人にはドン引きものでは無いでしょうか。何の違和感も無く今の春希とかずさを理解出来るのは雪菜だけでしょう。この後鈴木さんは当然今回の事を木崎や松岡に話したでしょうから今後春希に対面した時の木崎や松岡をどう書いてくれるのか楽しみにしています。

No title

ちょっとしたところで世間の常識とずれているというか、かずさ狂いの一旦が見られる春希の姿に満足しました

No title

続き楽しみ
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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