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The Day After 37

「で、現状ですが、チケットの売れ行きは上々、予定通りにコンサートを開催できそうです。でも、いいんですか?音を聞かれなくて。」

「あら、珍しく弱気ね。欧州での活躍も聞いているし、あなたがいるならパフォーマンスを心配する必要はないと思ってるんだけど?」

「ですが、ここは・・・。」

「言った通りよ。あなたがいるなら、あの子のパフォーマンスが酷いのになるはずがないと思ってるもの。それはどこでも、どんな時でもよ。今回だって悪くなる理由がないわ。あなたがいるんだから。」

「・・・。」

「それよりもわたしの娘の癖に、なんでこんなに人気があるのかの方が疑問よねぇ。」

「それこそむしろ、お母さんのおかげじゃないですか?」

「それ、褒めてくれてるだけじゃないでしょ。」

「もちろんです。お母さんがかずさをとても守っていたおかげで、お母さんほど周囲に対して無茶やらないことが今に繋がっているわけですから。」

「でも、愛想悪いじゃない。」

「愛想はよくないですけど、無理難題を突きつけたり、あちこちひっかけ回したり、注目を集める為に色々と手を回したりしないですからね。それに愛想悪いのも見方をかえれば、クールでカッコいいことにもなりますし。」

「それも誰かさんの戦略でしょ?」

「下地を作ったのは俺じゃないです。」

「つまりは自業自得と言いたいわけ。」

「有り体に言えば。」

「なんだかこうして色々とうまくいってるのを見ると、それはそれで腹立つわよねぇ。」

「いや、あの・・・。」

「そりゃね、これが奇跡の産物だってことくらい分かってはいるわよ。そもそもかずさを授かったこと自体がそうなのだから。でも、だからかしら、腹立つのよ。娘だから?ピアニストだから?」

「大人気ないからじゃないですか?」

「相変わらずハッキリ言うわね。・・・懐かしいじゃない。」

「こうして直接あれこれやり取りするのはあれ以来ですからね。」

「そうね、2人でかずさのことを話し合うなんであの時以来だものね、懐かしくて当然か。」

「・・・あれから二年経ちましたからね」

「そうね。・・・春希くん、二年もの間、ありがとう。」

「・・・やだな、急に。お母さんにも随分助けてもらってたじゃないですか。」

「でも大したことはできていないもの。だから、お疲れ様、ありがとう。わたしのたった一人の娘を幸せにしてくれてることを。」

「お母さん・・・。」

「そして、誇って頂戴。あのかずさをたった一人で異国で支え続けることなんて、この世界で、できるのはあなたとわたしだけなんだから。」

「・・・そうですねそこは誇らせていただきます。でも感謝されることじゃないですよ。勝手にやってることなんですから。」

「そ。ならわたしも勝手に感謝しておくことにするわ。」

「分かりました。それならそのお礼としてこれからはより頼らせていただきます。」

「ちゃっかりしてるわね。でも、了解。日本にいる間くらいは精一杯やらさせてもらうわ。」

「ええ、ご存分にお願い致します。」

「・・・そうやってわざわざ遠慮を取り除いてくれるんだから。そういうところもさすがね。」

「この二年間、歯がゆかったでしょうから。」

「そうでもなかったわよ。まさかの願いが叶ってしまったから、うまくいっちゃったからね。」

「それは・・・。」

「命を賭してもやらねばならないことを、最も信頼できる人に引き継ぐことができたんだもの、後は可能な限り行く末を見守るくらいですむんだから、やり遂げた感があったのよ。だから、歯がゆくなんてなかった。」

「・・・それならば簡単に命を賭すような真似は控えてくださいよ?」

「善処するわ。でも、これからも必要があればするつもりって言ったら怒るかしら?」

「怒りたいですね。でも、怒れる立場にないので。ウィーンにいらした理由も良く分かりますし。」

「あれを届けた責任、一部あるからそこはね。」

「だからといって・・・。」

「無駄に無理するつもりはないわ。そこはわきまえてるつもり。でも、あれだけはそういう訳にはいかなかったでしょ?」

「・・・。」

「だから、例え体に無理させたとしても本意よ。どうせ使うのなら、悔いは残したくないもの。やれることはやっておきたかった。それに最期に見た春希くんの顔が日本を発った頃の顔ってのは、ね。もう少し、マシな顔の方がいいかなって。かずさはあの頃でもいい顔してたから、それが変わりないかも知りたかった・・・。違うわね、わかってはいたけど、実感したかった、この目で見たかった、あの子の、親をほったらかしで幸せそうな顔を腹いせに見てやりたかった、かしらね。」

「・・・日本語表現が崩壊してますが?」

「だってそんな感じだったんだものー。」

「・・・はぁ。」

「そんな呆れた顔しなくてもいいじゃない。ほら、あるでしょ?街中で妙にイチャついてるカップルみるとイラッとすること。あれよ、あれ。しかもそれが自分の娘だって思うと、余計に。あれかしらね、可愛さ余って憎さ億倍ってやつ?」

「さすがにその言い回しはわざとですよね?あと、俺は別にそんなことでイラッとしませんから。」

「しないの?」

「しませんけども。」

「それ、おかしいわよ。」

「・・・・・・・はぁ。」

「って、そんなことはどうでもいいのよ。それより、コンサート、楽しみにしてるわ。」

「今回も、いい結果を残してくれると思いますし、そうなるよう、努力いたします。」

「それで・・・、前フリはこんなものでいいかしら?」

「・・・そうですね。」

「そ、じゃ、本題。日本の居心地は、わたしの母国にして臨終の地は、あなたたちにとってどうかしら?」

「・・・答えにくい質問ですね。」

「でもそのためにわざわざリラックスさせてあげたんだけどなぁ。」

「そうですよね。でも、その・・・。」

「複雑なのは分かってる。でも、これも重要なのよね。あの日、あなたたちをこうして日本に連れて帰ったことが、あなたたちにとってどうだったかの答えにもなるんだもの。わたしは良かったと思ってるし、正解だったと思っているわ。でも、あなたたちもそう思っているかは、あなたたちにしか答えられないこと。」

「ですね・・・。」

「後悔してない、でしょ?」

「それは・・・・・・、否定できませんね。」

「そ、なら、あの日、ああして説得した甲斐があったかしらね。」

「文字通り、命賭けで、あれには参りましたよ。俺もウィーンに連れて行こうとはしましたが、逆をされると余計にこたえるものなんですね。」

「こたえてもらうが目的だものー。気持ちに応えてもらうのも、だったけど。」

「今でも覚えてますよ、あの時のことは・・・。」

「やるならあれくらいやらないと、ね?」





~*~


「ということで、招待でもいい、帰国を促すに来たでもいい、連れ戻しに来たでもいい、一緒にいてと懇願に来たでもいい、どんな理由でもあなたたちの好きにとってくれてかまわないわ。ただ、わたしと一緒の飛行機に乗ってくれれば、それでいいと思ってる。」

「・・・母さん。」

「それはつまり・・・。」

「そ。決断を聞きにきたの。応えるかどうかの決断を。」

その裏側にある、最後の機会
これを逃せば二度とあの国を踏むことはなくなるだろう
だからこその決断を求める

「いきなりだな、母さん。」

「そうかしら?あなたたちだって考えたでしょう?あれを見たら、どうしたって考えないわけにはいかなかったはずよね。」

「・・・おっしゃる通りです。」

「でしょ?それで?」

「でもな、母さん、それは簡単なことじゃないんだよ。」

「けど答えは二つに一つよ。わたしと一緒にくるかこないか、それだけ。」

「そりゃそうかもしれないが・・・。」

「難しく考え過ぎなのよ、あなたたちは。あれを見て、答えを返したいと思ったかどうかよ。」

「それは、その・・・。」

「ここで何を考えたって想像でしかないわよ。本当に会ってみなければ、やってみなければわからないものよ。」

「・・・。」

「機会があるなら逃しちゃダメよ。後悔ない方を選んで欲しいの。」

「それはもちろんです。ですが、悩んでる理由はかずさにとってどうか、ですから。」

「・・・そっか、そうよね。わたしとしたことが少し見失っていたのかもしれないわ。・・・来週には帰国予定だから、その時までに決めてちょうだい。」

「はい、分かりました。」

「・・・母さんの気持ちは分かってる、つもりだ。」

「・・・そこも考慮の対象に加味してくれると嬉しいかしら。」

「もちろんです。」

「当たり前だ。」

「それじゃ、出発の前夜までに答えを聞かせてちょうだい。・・・前向きな答えを期待しているわ。どっちであったとしても。」

「・・・なかなか、うまい釘の刺し方ですね。」

「まだまだあなたに劣るつもりはないわよ、春希くん。」

「・・・みたいで。」

「そ、だからできる限りのあらゆることをして、望みは叶えることにしてるもの。」

「もしかして、あれの発案は・・・。」

「まさか。さすがにそれは渡りに船でしかないわ。でも、その機会もこうしてうまく重ねたわけ。」

「・・・さすがといえば、さすが、で。ここまでするんですから。」

「そりゃ、ね。それだけのこと、だもの。賭けるもの、賭けてるもの。」

「「・・・・・・。」」

「それじゃ、おやすみなさい。よい、明日を。」




~*~



「あなたたちが飛行機に乗ってくれるって次の日に言ってくれた時は、結構感動したのよ?これでも。」

「ご自分でこれでもとかおっしゃらなくても。」

「40過ぎると涙脆くなるなんて嘘だと思ってたけど、あの時はちょっと実感しゃったなぁ。」

「そこは突っ込みませんからね。」

「あ、やっぱりバレてた?折角そこに触れたら、デリカシーにかけてるところ、かずさみたいねってからかおうと思ったんだけど。」

「多分、それ、かずさが怒りますよ。かずさに言わせれば俺の方がデリカシーないそうなんで。」

「そう?あの子だって人のこと怒るほど、デリカシーないと思うんだけど。ちょっと遊びに行くと男がどうとか言ってくるのよ?」

「3年以上前のことは存じてないので。」

「春希くん、それ暗に肯定してることになるの分かってるでしょ。」

「いえ、だって・・・。」

「確かにあなたもあの子といい勝負かも。」

「昔なら、嘘はつけない性格なので、って言ってたんですけどね・・・。」

「さすがのあなたもナーバスになってるのね。」

「今度のコンサート、くる・・・らしいので。」

「なるほど、ね。」

「・・・ええ。」

「でも、あなたが心配するようなことも思い悩むこともないわよ。」

「え?」

「だって、女の戦いだもの、あなたの出る幕じゃないわ。」

「・・・。」

「もし、悩むなら、その先にあることに、かしらね。」

「・・・・・・。」

「その時は色々と悩むでしょうから、相談にいらっしゃい。遠慮はいらないわ、それくらいで寿命が縮んだりしない程度には人生、生きてきたもの。」

「お母さん・・・。」

「あなたにとってはおそらく、唯一、何の遠慮も考慮もいらない相談相手よ?」

「・・・かもしれませんね。」

「でしょ?でもそれまではあなたが悩まなければならないことはないはず。だから、今回のコンサートはあなたも観客でいなさいな。」

「俺も、ですか。」

「ええ、あなたも。あの子にとって、今度のコンサートは返事なのよ。ビデオレターに対する、ね。」

「・・・。」

「女同士の音に乗せた意思表明と想いのぶつかり合いに野暮な真似はしないほうがいいってこと。下手すると大怪我することになるわ。」

「・・・分かりました。」

「それを彼女がどう受け止めて、何を思い、どう望むか。それらを彼女が自分の口から語ったら、あなたたちは応える義務が生まれる。悩むのはその後でいいのよ。それまではいつものあなたたちでいなさい。」

「・・・早速、助けていただきましたね。」

「これくらい、お安い御用よ。口を挟むだけなら、大した労ではないもの。せいぜい、春希くんに年の功と思われるのが腹立つくらいね。」

「あの、誰もそんなことは・・・。」

「思ってない?」

「思想・信条の自由は保障されているのが日本でして。」

「そこで否定しないのがなんとも。ま、ということで、今回に限ってはコンサート中あなたに出番はないってことはOK?」

「みたい・・・、ですね。」

「やることないってのは却ってしんどいかもしれないけど。」

「少なくともこの二年間は、暇なく動き続けていた身としては、けっこう辛いですが。」

「でしょうね、でも、我慢。時には大切よ、待つことも。」

「・・・承知しました。」

「すっかり説教になっちゃったわね。かずさにでさえこんなに言ったことないくらいに。」

「かずさの場合、受け入れることがないからかと。」

「そうなのよ~。あの子、わたしの言うこと、なかなか素直に聞いてくれないのよね~。」

「嘘を混ぜるからじゃないですか?」

「仕方ないじゃない、からかうと楽しいんだもの。」

「いえ、ですから、それが原因なわけで。」

「娘をからかうのは母親の特権よ?」

「男の俺には分からない世界ですから。」

「オチがついたところで、おしまいにしておきましょうかね。それじゃ、コンサート楽しみにしているわ。」

「はい、楽しみにしていてください。」

そういって、春希は病室を辞した
さしあたって、コンサートの開幕まで自分にできることはもうなくて
後はかずさを信じて見守るだけ
それが、夫でマネージャーでプロモータの役割
だから、いつもの北原春希に戻って、家に帰り
かずさの隣にいるだけ
コンサートはもうすぐだから。


~~~~~~~~~~~~
ということでコンサート前の春希と曜子の会話でした
かずさと3人での会話とはまた違うこの2人の会話は
触れ幅が大きくてなかなか難しいですが、結構キーとなりますね。
そんなわけで、ウィーンでの話とあわせて37となりました

そして雪菜がわの37.5、コンサート直前の春希とかずさの38と続きます。

なお、短編もちょいちょい進めておりますので~
また、近いうちに公開できたらと思っております。



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感想+おめでとうございます

冬馬かずさがこの世で最も信頼し愛している2人の話し合いは、かずさ自身が決断する以上にかずさの将来の事に繋がっていく感じですね。春希と曜子さんもお互いが、かずさには言えない自身の悩みや愚痴を吐き出せる唯一無二という意味では義理の親子というより、戦友のような存在ですね。
最後に今回で「The Day After」も通算50回ですね、おめでとうございます。これからもこの作品も含めて、海辺月さんの生みだす物語を楽しみにしています。

この37で物語が動いてますね。いよいよ大きな山が来るという感じでゾクゾクします。それにしても春希と曜子さんの会話は知性が高くて弁が立つ者同士、切れ味がありますね。良く本編のその雰囲気を再現してると思って感嘆します。

ご存知かも知れませんがSS情報です

WA2まとめwikiで新しいssが始まりました。タイトルは、
「Not Love But Affection」
です。かずさTedアフターですが、今までに無いタイプのSSですので私にはとても新鮮でした。まだ読んでいない事を前提でちょっとだけ中身を紹介します。冒頭は柳原朋のインタビューで始まるので⁇という感じになりますが、相手は何と小木曽雪菜です。冬馬曜子事務所から歌手としてデビューしたのです。これまでに載っている話を読むと主役は完全に雪菜になっていて、ずっと彼女のターンという感じですね。是非読んでみてください。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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