The Day After 38

「緊張、してるか?」

「まさか。あたしがコンクール前に緊張してるの、みたことあるか?」

「ここ二年ほどはないけど。」

「昔から、コンクールで緊張したことはあまりないぞ。」

「でも、今日はいつもと違うだろ?」

「そうだな。今回はいつもよりも、腕がなる。」

「それなら、いい・・・のか?」

「とはいってもいつでもどこでも、あたしはピアノを奏でるだけだし、そこにあるものは変わらないよ。」

「そっか。」

「それより、また今回のも撮るのか?向こうで撮ってたのは理由も分かるからともかく、なんで日本まで。」

「お母さんのご要望。」

「なんで?」

「さぁ?後から見返す用じゃないのか?」

「あの人がぁ?難癖つける為にやってる気がしてくるな。」

「相変わらずの母親像に言いたいことはあるが、でも、後でここがどうとか言うときにあった方が便利なのは確かだろ。」

「でもあたし、あの人からそういう細かい指導は受けたことないぞ。感想ならまだしも。」

「今まではそうだったかもしれないが、これからはそれだけじゃないかもよ。色々とお母さんの方も心境の変化はあったろうし。」

「だといいがなぁ。本人はまだ自分のことピアニストだと思ってるだろうし、そうそう変わるとは思えないんだよなぁ。」

「そう言われると、俺もそんな気はしてきたが、後のお楽しみにしておいてくれ。」

「あの人が関わっている時点で楽しみにはどうやってもならないだろうけど。」

「あきらめてくれ。こっちも社長命令に従っているだけだ。」

「そういう逃げが板についてるな、お前。」

「お前の皮肉もな。」

「・・・はは。これから大舞台がまっているってのに、こんなやり取りしている自分に笑えてくるよ。」

「これがいつも通りだからな。そして、それでしか勝負できないだろ、俺達は。」

「分かってはいる。そもそもコンサートの理由が理由だ。」

「だ、な。」

「・・・本当にこの時がきたんだ、な。いつかはと思っていたけど。」

「ああ、日本に戻ってきた時から、来るとは思ってたが、今で良かったのか・・・。」

「相変わらず、頭が異常に重たいやつめ。」

「中身のないかずさの分も入ってるからな。」

「だとしたら、もっと手先が器用で音楽センスもあるはずだから、それはない。」

「言うと思ったよ。」

「春希はむしろ、思ったより安定しているな。あれこれとあたふたしてるかと思ったが。」

「お母さんに観客でいろって言われたからな。その意見を参考にしたんだ。」

「なるほど。」

「俺にやれること、ほとんどないしな。」

「そういうこともあるだろ。むしろ、これからそういうこと増えるんじゃないか?」

「だなぁ。歯がゆい所だ。」

「でも、そのためにあたしがいる、そうだろ?」

「・・・か。」

「さすがに日本に来たなら、笑ってピアノだけを弾いている訳にもいかないし、覚悟はあるさ。」

「ああ・・・。」

「今日だって本当は思うところは色々あるよ、あたしだってさすがにな。でも、謝罪や懺悔したって、そんなの嘘だって雪菜には簡単にバレるさ。一番はそれじゃないんだから。だから、あたしは嘘偽りなく、いつものように、いつもの音を聞かせるだけだ。雪菜が何のためにわざわざギターを奏でて、あれを歌ったのかを思えば、あたしだって半端なことはできないからな。」

「『powder snow』、だもんな。」

「ああ。それに後ろ向きで白旗振るような真似はできないだろ?」

「それじゃかずさにならないもんな。」

「そうだ。あたしは、冬馬かずさは、あれ以来ピアノを奏でる時はいつだってこめているものは一つで、だからそれを雪菜にもぶつけるだけだ。例えそれが雪菜にどんなに辛い思いをさせても。」

「分かってる。だから、行ってこい、お前のピアノ、俺たちも楽しみにしてる。」

「ああ、母さんと2人で聞いててくれよ。それじゃ、行ってくる、春希。」

「いってらっしゃい、かずさ。」

そうして彼女を控え室から送る
舞台袖には行かずに、ここで見送る
今日は、春希も観客なのだから―――

予告どおり、コンサート前の一幕です。
今回のコンサートに対してのかずさの想いと
できることの限られている春希のシーンですね
この後、コンサート直後の雪菜のシーンがあって
欧州にちょっといって、冬に突入予定です
そこからが、本番なので頑張って書いていこうと思っております。
あと、短編はちょこちょこ書いてますので、もう少しお待ちくださいませ~。

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感想

今回の話の様な春希とかずさの会話は、2人がウィーンに行ってから今までコンクールやリサイタルが始まる前に、ピアニスト冬馬かずさがいつも通りの演奏をする為のルーティンなのでしょう。これまではかずさは基本、観客がどれだけいても春希と曜子さんへ向けての演奏だった物が今回は雪菜が観客にいることで、いつもとは違う緊張があるのでしょう。
最後に今月に入ってから私がよくアクセスするWA2のSSサイトがこちらも含めて更新がありませんでした。(まとめwikiは少しありましたが)ところが今日辺りから来週の初めにかけて(こちらは今日更新されましたが)申し合わせたかの様に更新されそうなので、凄い偶然だとちょっと驚いています。

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No title

タイトル間違っているとの指摘、ありがとうございます!
早速修正いたしました~。我ながら、うっかりがおおすぎですよね・・・。

それと、年度末、年度初めは皆様お忙しいでしょうから
なかなか更新しづらいのでしょうね。
かくいう私もようやく落ち着いてきましたが、それまでは随分とばたばたしておりました。
春真っ盛りですが、ぼちぼち書いております、お待たせしております~。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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