『届かない恋』を届けて

「なぁ、かずさ。頼みがあるんだが。」

「やめないぞ。」

「・・・。」

「お前は大人しく仕事の続きをしてろ。こっちは終わるのを待ってるんだから。」

「そう思うなら、協力してくれないか?」

「協力?してるだろ?今日はこれっぽっちも邪魔してないじゃないか。」

「確かに今日は乗っかったり、人を椅子や背もたれ代わりにはしてないかもれしない。でも、間接的にしてる。」

「ふむふむ、それは・・・これか?」

「最初っから分かっててやってるだろ、お前。そうだよな?そうだと言ってくれ。」

「そんなに気になるか?これ。自分で書いたんだろ?」

「当たり前だ!というか、自分で書いたから気になるんだって。俺が書いたのじゃなきゃどうでもいいわ。」

「それもそうか。ま、これだけ似合わないもの書いてれば気になるよなぁ。」

「笑いながら似合わないものとかいうな。やっぱり邪魔してるだろ、お前。」

「あははは!だってなぁ、タイトルから笑えてくるだろ。」

「いや、普通のタイトルだから。どこにでもあるタイトルだろ。」

「だって、あの春希が!堅物委員長が!『届かない恋』だもんな。」

「余計なお世話だ、そのタイトルを蒸し返すな、俺に仕事をさせろぉぉおおお~・・・。」




「だいたい、そんな昔のノートを眺めて何が楽しいのか分からん・・・。」

「あの頃の春希のことを色々と想像する、という素晴らしい楽しみがあるな。」

「あの頃の、か。・・・それ、楽しいか?あと、何がどう素晴らしいかはもっとわからん。」

「正直言えば、楽しいだけじゃない。でも、楽しかったのも事実だ、だろ?あと、素晴らしいかどうか決めるのはあたしだしな。」

「それは否定できないな・・・、後半は否定したいけど。」

「だろ。それに、似合わないことをしでかした理由も併せれば、ほんとに読み応えあるぞ。」

「それなぁ・・・、武也にそそのかされたのが原因とはいえ、振り返れば我ながら・・・。」

「イタイやつ?」

「ちょっと自覚してるから、追い討ちかけないでくれ・・・、正気が保てなくなる。」

「だってお前、あの頃は、証を残したいみたいなこと言ったろ。優等生で、学年トップ独占してもまだ足らないのかと思ったのを今でも覚えてるぞ。」

「お前が覚えてないことがあるか聞きたいが、それはともかく、あの時はむしろ、そんなのだけ残したくないから、というのもあった。」

「ふーん?」

「お前だってピアノが優秀だった冬馬かずささん、ってのだけで名前が残るの嫌じゃないのか?」

「あれは単に散々人を否定しておいて、卒業してちょっと名前が知られたら手のひら返した様な発言が頭にきただけだ。」

「俺もあれはどうかと思ったけど。」

「だからといって、自分がいた証なんか残したいとも思わないけどな。」

「それはお前が、特別な才能があるからだよ。凡人はこう跡を残したくなるんだよ。」

「春希が凡人、ねぇ?」

「というより、さっきから分かっててワザと俺の反応で遊んでるだろ。」

「何がだ?」

「その笑った表情でそんなことを言うのが何よりの証拠だが、俺がなんでそれを書いたか、だよ。」

「さすがにな。今ならよ~く分かる。春希が似合わないことをするわけも。」

「さっきも言ったが、原因の多くは、武也なんだけどな。」

「これとも関係があるのか?」

「あいつに異性と仲良くなる方法を聞いたら楽器がどうのこうのと。で、補欠にされたんだよ。その代わり、それを形にしてもらうことで一致したの。」

「だから、これを部長が持ってて、渡してきたのか、本当の夢を形にしてくれってさ。動機がこれのためかと思うと、ますます春希に似合わないよな。」

「らしくなくって・・・。」

「らしくはある。何を思ってこれを書いたかを思えば。」

「かずさ・・・。」

「ただ、それでも内容がなぁ。孤独なフリとかさ、気になってた理由って絶対違うだろうし。」

「雰囲気ぶち壊してくれた上に、違うってなんでだよ。」

「だって春希が前に言ってたろ。顔見て一目惚れとか。それと、春希の性格考えれば、当時のあたしの振る舞いに委員長気質が刺激されっぱなしなだけな気もするし。」

「・・・素晴らしい記憶力と的確な分析で。」

「だろ?」

「だけど、独りでいようとしてるのは気づいてたし、なんでわざわざそうしようとしてるのかは気になってたぞ。寄せつけない様に、なんでもかんでも拒絶してただろ?」

「そりゃ、あの頃はな。」

「だからだよ。」

「だから、気になった、ほっとけなかった、いつの間にかひかれていた、か?」

「まぁ、そんな感じ、だな。」

「というわりに、自信なさそうな歌詞だよな。」

「あんまりそういうことに慣れてなかったからな。俺自身、想いを持て余していたっていうか、家族がああなってからはそういうことからは遠のいていたし、避けてたから余計にどうしたものかっていう感じだった。」

「なるほどな。だから、あんな微妙なアプローチになったわけか。」

「他人に言われると反論したくなるが、そうなんだよなぁ。もう少しうまくアプローチできればとは今なら思う。」

「春希に限ってそれはない、有り得ない。」

「その否定は読めてたよ・・・。」

「アプローチ上手な春希とか寒気がするし。」

「そこまで言われることもないはずなんだが。」

「でも、この詩自体も、メインの部分も不器用だから、だろ?」

「だなぁ。分かって受け入れるまではできても、相手に見せるとか、映し出すとか、難しくって。」

「そうか・・・。」

「ああ。」

「で、二番の歌詞だが・・・。」

「まだ続けるのかよ!?」

「ここからが本番だろ。」

「ぐ、、、それは、そういう面もなくはないが・・・」

「そもそも初めて声をかけられた時、振り向いた記憶はないわけだが。」

「振り向いたんじゃなくて、寝てたの起こしたから見上げられた、が正しいのは覚えてるけど。そこまで正確に描写したくない。」

「なんで?」

「そこまで覚えてることが自分でも悪い意味で大したものだと思ってるのに、わざわざそれをアピールなんかしたいわけないだろ。それにそこまで直接的に書けるならこの詩と矛盾するだろ。」

「それもそうだな。でもそうやって半端するのがボヤける原因ってことにもなるぞ。」

「そう言われると・・・。」

「なんだかんだと、ちょっとずつ誤魔化したりずらしたりするから、遠回りになるんだって。」

「わかっちゃいるんだけど。」

「だろ?でも、まぶしいってのだけは、そのまま、だな。」

「そりゃな。そこだけは譲れなかったというか、そこを誤魔化したら何も書けなくなるし。あの時は、なんていうか言葉が出ないくらいに見惚れたよ。まさか、自分がそんなことになるなんて思ってもみなかったし。だから、ほんと、衝撃的だった。だからこそ、そいつが生まれたくらいだし。ただ、それをお前に伝えるというか、お前に届けるのは無理だろうなとも思ってたから。」

「それで、どうすれば、か。」

「ああ。あの頃のお前がそういうことに関心なんて全くなさそうにしてたから、そんな中でのアプローチってできないじゃん?そもそも、まともに会話が成立することが稀だったんだから、悩みたくもなる。」

「だからって、これは・・・なぁ?」

「はいはい、キャラじゃないさ、どうせ。」

「そうすねるな、男が。」

「ならネタにするのはやめてくれっての・・・。でも、実際にお前に聞かせるかどうかよりもまずは形にしたかっただけなのかもな。」

「想いを形に、か?」

「ああ。今さら好きかどうかで悩むことはなかったけど、形にすることでまた何か変わる切っ掛けになるんじゃないかとか、これで少しは違う自分になれて、そうすればお前にも近づけるんじゃないかとか、さ。」

「確かに、それは変化をもたらしたな。形にすることそれだけでも、あんなに。」

「だからお前も誠意を形にしてくれてもいいんだぞ?」

「それは無理だ。これを閉じることはできない相談だ。」

「いや簡単だから。」

「無理だって。そしたらあたしの楽しみがなくなる。」

「ほかに楽しみを見つけてくれ。俺をからかう以外の楽しみを。」

「そんなものはこの世にないな。」

「そこまで断言されると、こっちが言葉をなくすよ。」

「だから、黙って仕事に集中してればいいんだって。早く終わらせればその分、これを見られる時間も減るだろ?」

「だったら集中させろっていう最初の話に戻るんだろうがぁ~・・・。」

「そして堂々巡りになるわけだ。」

「わざとかよ、そこまでも含めてが。」

「さすがに単なる偶然だ。あたしはお前ほど、無駄に頭脳を使って他人を陥れる趣味はない。」

「といいつつ、そのセリフ自体で結構頭脳使ってるだろ、かずさにしては。」

「日頃、あたしはどんだけ使ってないと思われてるのやら。」

「よく言う。」

「で、話題をそらせて満足か?」

「・・・そんなにすぐに気づかないでくれると嬉しいんだが。」

「慣れたからな、あの頃とは違って。だからお前も慣れるといいんじゃないか?」

「無理いうな。それがどんだけ特別かお前だってわかってるだろうが。」

「ま、な。」

「あらゆる点で俺には特別すぎるんだ、慣れるなんて不可能だって。」

「ならあたしもこれを開くたびに楽しめるわけだ。あの頃の記憶と、想い出と、お前の反応を、な。」

「それをすべて楽しめるなら、それもいいかもしれないが・・・」

「言ったろ?お前がここにいるから楽しめるんだ、全部ひっくるめて。」

「・・・それまたズルいセリフだろ、そう言われたら俺は何も言えないじゃんか。」

「なら諦めてさっさと仕事を終わらせればいいのさ。だろ?」

「はいはい、頑張らせていただきますよっ・・・と。」

「今は頑張れば頑張った分、届くんだからいいだろ?」

「そう・・・だな。届くというか搾取されているかは考える余地があるがな。」

「いつも一言多いんだよ、お前は。」

そういいながらかずさの口元は笑っており
今日もまた二人で 他愛のない会話を楽しむ

あの頃につくった作品片手に
今を生きる、そんな日常

そんな、春希とかずさ なのだ



~~~~~~~~~~~~~~~
無駄に長らくじかんをかけてしまいましたが、リクエストSS「届かない恋を届けて」でした
歌詞についで二人が語るというSSです。今作は歌詞や当時に触れつつも軽いというか少し甘みのある雰囲気でのおとどけです。
実は書いてる途中でけっこうシリアスになっていったのですが、そうなると全体で雰囲気の落差が激しすぎたので分割して、こっちは軽めの雰囲気で統一したため時間がかかってしまったという次第です
シリアス版も近々公開しつつ、長編とほかのリクSSと山だくさんですが、少しづつでも書き続けておりますので、毎度ながら気長にお待ちいただければと思います。

それでは、また次回で~。

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感想

今回の話を読んで改めて思うのは、武也は春希の人生を(結果として)決定付けるアドバイスをしたのだなあと言うこと、勿論武也自信は軽い気持ちで言ったのだと思いますが(まだ高校生だったのだから)仮に武也に御礼を言ったらどんな顔をするでしょう?このssの世界観なら何とも言えない複雑な顔をしそうですね。
後書きに書かれているようなシリアスバージョンの場合はもう一人が話題に上がると思いますが個人的には余り悲壮感が強過ぎない方良いかなと思っております。

久々更新キター!
やはりこの2人はこういう日常でゆったりのんびりとイチャイチャしてるお話が好きだなぁ。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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