The Day After 40

この独特な感覚

旅立ったはずの場所に引っ張られているのか

前に進む中で風が強くて押し戻されているのか

そのどちらをも感じる

この、瞬間

単に加速するなかで重力がかかっいるだけだと頭では分かっているのに

そんなことを感じて

頭の中も感情に塗りつぶされてしまう

心がそうさせる

この、成田空港から飛び立つ時

どうしてもそう感じてしまう

あれから飛行機には何度も乗ったのに

ヨーロッパでも移動は飛行機の方が速いために何度も乗ったはずなのに

場所が違うだけで

離陸した瞬間にそんな感覚に捕らわれる

そんな二つを感じてしまう

過去が、心が、それを感じさせる

未来に運命を動かすような出来事がある気がして

日本にただ一つを除いてあらゆるものを置いてきた気がして

心が騒ぎ続けるのだ



The Day After 40



「それで、春希。ヨーロッパ行った後の予定は?」

かずさは、隣に座りながらもどこか遠くへと意識をやっている春希を呼び戻す
春希がそのような状態になっている理由も当然、かずさにはよく分かっている
このシチュエーションそのものが2人にとっては忘れられるはずのない過去を思い起こさせるのだから

たが、今はあの時とは違う
あの時のような『旅立ち』ではなく
この先に、運命を動かすような“何か”があると怯えることもないのだから

春希の意識を逸らさせるためにも

未来についてたずねる

「え?・・・えっと、ヨーロッパでの予定は1つだな。コンクール1つだけ。」

そのかずさの呼びかけに春希は咄嗟に反応はできなかったものの
その声によって、先ほどまでの思考と感情の渦から脱することはできた
かずさの声はどんな時でも春希を振り向かせる

「その為だけに何ヶ月もヨーロッパか?」

そしてかずさは春希が再び思考の渦に戻らないよう、様子を確認しながら話を続ける

「コンサートも入れようかと思ったが、そうするとスケジュールが忙しめになるからな。今はそうじゃない方がいいだろ?」

「ま、そうだな。でも時間が増えるのがいいかどうかは微妙だが。」

2人にとって時間がある、というのはいいこととは限らない
そんな共通認識がある

「時間は時間でも、整理する時間と思えばいいさ。それに何ヶ月という程もいないよ。せいぜい2ヶ月くらいだ。」

冬になる前に戻らなきゃならないだろ?

春希が声なき声で語るその言葉を
かずさだって理解はしている

多分物語はいつだって冬にならなければ動かない3人で
逃げないと決めたからには
冬には日本にいなければならないのだから

「あんまり慌ただしいのは好きじゃないから、その方がいいけど。」

「お前の好みというより、俺の都合にあわせたんだがな。あんまり詰め込むと、時間が取れなくなる。」

決意と覚悟を固める時間が

春希の再び声なしで語ったその言葉を
かずさは当然理解し、静かにうなずく

「春希の方が大変だもんな。」

仕事もさることながら、決意も覚悟も必要なのは自分よりも春希の方だもんな

かずさもそう言葉にすることなく返す

それでも春希には通じるし
実際にかずさよりも春希の方が決意がいる
いつだって決断を最後にくだすのは、春希の役割

「あと、向こうの家の管理とか、置いてある物の整理とか、課題が山積みなんだ、俺には。」

「それはそれは所帯じみた課題で。」

「所帯持ちだからな。手伝ってくれてもいいんだぞ?」

「だからいつも言ってるだろ。仕事を増やさないように協力しているって。そんな健気なあたしになんてことを。」

「健気って表現に対して疑問を覚える回答をありがとうよ。」

そして、いつもの通り、いつもの会話に戻す

「それに手伝ってもいいが、それで怪我をしようものなら大慌ての大騒ぎになるじゃないか。」

「ピアニストが手を怪我して騒ぎにならないわけがないだろ。仕事のしようがない。」

「だったらあたしにできることがあるのか。」

「いや、ある。物置にねむってる中で、昔からあるものや値打ちものとかあれば教えて欲しい。それを捨てるわけにもいかないし。」

「あたしだって詳しくは分かんないぞ。だいたい物を増やすのは母さんだ、特に高価なものは。」

「だよな。となると 写真でも撮って確認してもらうしかないか。」

「それまた地味かつ時間のかかりそうな作業で。」

「後で心臓に悪い話を聞かされるよりはいいだろ。」

そんな春希のセリフに肩をすくめることでかずさは答えた

そして訪れる僅かな沈黙の時間

春希は先ほどとは違い、頭の中でこれからやらねばならない業務や家事のことでああでもないこうでもないと考えを巡らせ

かずさはそんな春希を眺めながら見守る

そんな風にして、2人は欧州へと向かう

これから先は、欧州にいる時だけはどこにでもいる夫婦になれると同時に2人だけの生活になるから

僅かな不安を日本に残しつつも、しばしの夫婦だけの時間がやってくる



~~~~~~~~~~~~~~~~
ということで、欧州へと向かいました
冬までは完全シリアスな話はないと思うので、夫婦の時間が書けるかと思いますし
そこを焦点にしたいのですが、技量次第ですよね、ええ。

そんなわけで、季節も冬になりますが、もうしばし秋の2人をご覧ください。

ついでに今回はこう間を表現するのって難しいよねってことが改めてよ~くわかりました。
もしかしたらまた構成をいじるかもしれませんが、その時は推敲したといえるようによりよくしたいものですね・・・。

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

感想

更新お疲れ様です。
帰国して雪菜と再開し、コンサートを行って一応一区切りを付けた後でのヨーロッパ行きはあの時とは180度違う状況下とはいえこの夫婦には特別な思いがあるようですね。
まだまだ苦い思い出の多い日本よりも2人きりで過ごした思い出しかないウィーンの方がホッと出来るのでしょう。どちらかと言えばかずさよりも春希の為のヨーロッパ行きかもしれませんね。かずさの春希を気遣う健気さが良いですね、なんだかんだでちゃんと春希の妻やってますね。次回も楽しみにしています。
WA2関係のトピックは来月コミックの3巻が出て、いよいよ待望のミニアフターですが海空星雪さんは応募されていますか?サイトには収録を終えたメイン3人のコメントが出ていますが、読んだ限りではなかなか甘い内容のようです。
来年果たしてアニメの続編があるのか期待したい所です。

年末の御挨拶

今年も多くの良い物語をありがとうございました。
ミニアフターは手に入れることができましたでしょうか?新たなssの材料になりそうなことがいくつもあるのでここからのssにも期待しています。
それでは良いお年を御迎え下さい。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR