The Day After 45

「覚悟、決めたのね。」

先日、日本に帰国した2人はまず冬馬曜子を訪れ、これからどうするかを話した
それに対する反応がこれ
表情には 理解と ほんの少しの呆れ と 諦め があった

「でも、そうよね。そうせずにはいられないわよね、あなたたちなら。」

僅かな羨ましさをも覗かせながら曜子が言葉を続ける

「もうどこにいても、それでどうにかなるわけでもないしな。」

答えたかずさは決意と覚悟のみを見せて言う
2人だけの世界から出た以上、どこにいたって繋がりはなくならない
届けようと思えば、映像だって声だって歌だって届けられる
それならば、だ

「そんな時代になったのねぇ・・・。」

「年寄り発言か、らしくない。」

「あなたね、わたしだってたまには感傷にひたることはあるのよ。」

「それもキャラじゃないだろ、病気で気弱にでもなったのか?」

「・・・そういうあなたは強くなったわね。」

思わず曜子がもらす
春希が隣にいる時のかずさは、自分が知るあのかずさじゃないって、わかってはいたはずだが

「あっちでの二年も、この半年も無為に過ごしてたわけでもないしな。・・・しかし、春希と同じこと言われるとは思わなかった。」

「だって・・・ねぇ?」

「まあ、そうですね。」

「そんなことばっかり分かり合いやがって。」

言葉曖昧ながら分かり合う義理の親子に
肩をすくめる実の娘

昔のあのかずさを知るものとして、そう思うのは無理のないこと

「春希がいてくれてるんだ、違うさ。」

それに対するかずさの言い分は変わらない

「それもそうね、そうじゃなきゃ申し訳たたないものねぇ。」

自分とは違う決断した曜子は少しの皮肉と大きな敬意をこめて言う

「そりゃな。あの時のあたしを見てればそんなこと今さらだろ。」

日本を立つ前のかずさを見て曜子自身、幸せいっぱいという表現をしたくらいだ
故郷と母に別離を告げるはずの時 なのに

「そう、よね。そしてだからこそ、ぶつかれるし、ぶつからねばならないのよね。」

逃げたと自分では思っていないけど
人によってはそうも見えるかつての自分とは違う娘を眩しく感じることもある
少なくとも前を向いてハッキリとぶつかると言える娘は
自分の道を歩き始めているのだ

もう、母親の跡を追い、まるで同じ様な道を歩もうとしているかのような危うい娘ではなくなった

自分が唯一手に入れられなかったものを手に入れたこの子は
自分が手を引かねばどこにも行けなかった子供じゃなくなったのだ

「にしても長い荷物になりそうね、人生思ったよりも長いものよ?」

「今のあんたが言って説得力あるんだか、ないんだか・・・。」

「そうでもないわよ。かずさは知らないでしょうけど、私は昔、こんなに長生きするつもりなんてなかったもの。」

「あんたが?そんなこと聞いたことがないんだが。」

「でしょうね。かずさ、あなたがいるから長生きしなきゃならないって思うんだから。今だってそうじゃない。何のためにわざわざ私が闘病生活してると思うのよ。」

「ちょっと意外ですね、かずさのことはともかくとしても、どんなことにも闘っていきそうなんですが・・・。」

かずさがその言葉に応えられないのを見越して春希が疑問をきいてみる

割と昔からそういったものには負けん気を発揮する物だと思っていた

「間違ってはないわ。ただ若い頃は色々なものにぶつかって闘って無茶ばかりしていたから、長生きしている自分が想像できなかったのよねぇ。」

「今でも充分、というかあたしが知る限り、あたしが小さな頃から好き勝手に無茶ばかりしていたようにしか見えなかったんだが。」

闘病に関しては自分のためというのは理解してるから返す言葉がないかずさだったが
自分の子供の頃の話となると疑ってしまう
どう考えても母親というにはどうなのだろうという記憶が山ほどある

「していたかもしれないけど、独りの時よりは大人しくというか、かずさに迷惑にはならないくらいにはしてたもの。」

「その基準価値が既におかしいんじゃないか。迷惑かけないって、世話をしなきゃいけないのが親だろうが。」

「そこは無理そうだと思ったので人に任せたわけよ。でも、できることはしてたし、私だって守りにはいってた部分もあるのよ。少なくともあなたが小さい頃には日本住まいだったでしょ。」

「日本にいた時間と海外にいた時間を比べると日本にいたと果たして言えるかは微妙なとこだけだな。」

「それこそしょうがないじゃない。日本だとピアニストとして生きづらい状況だったんだから。」

「その原因をつくったのはあんただろ?自業自得としか思えないんだが。」

「ああ言えばこう言うこね、全く。話が進まないじゃないよ。」

「あんたの言うことがツッコミ所多すぎるせいだろ。自分の都合のいいように語りやがって。」

「人間なんてそんなものじゃないかしら。誰だってわざと自分の都合悪い様には言わないでしょうに。」

「あんたの個人的なやり口に人類全体を巻き込むな。」

本題は話し終えたかのようにいつものを繰り広げる2人を見て
半分、いや8割くらい苦笑する思いな春希であるが
これからのことを考えれば、今くらいはという思いもある

これから俺たちが雪菜とするのは、しなければならないのは話し合いなんかじゃない

意思のぶつけ合いだ

互いに自分が望むように望むことを相手に伝える、なんて優しいものじゃなくて
言葉にして投げつける、相手が受け取れるかどうかなんて考えずに。

そんな闘いが待っている

だから、この時間は、親子の時間くらいは日常の風景でいい

嵐の前くらいいつもの賑やかさを―――


~~~~~~~~~~~~~~~~~
そんなわけで挟まなくてもいい回なのですが、母と違うかずさというのを曜子が再度実感するという意味でも中身はあるシーンかと思います。それと、これからの決意表明、その先にあるものを言葉少なに語るシーンですかね。
そろそろちゃんと次回を形作ってからでないと掲載が難しくなってきた関係で長編は大分間が空きましたが、ボチボチこちらも終盤に少しずつ向かっております。なんかんだと着地点というかエピローグが見えておられる方が多く、その割に亀な速度なのが申し訳なく思いますが、もうしばしお付き合いいただければと思います。

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久しぶりのThe Day Afterですね。

更新お疲れさまです。
The Day Afterは前回から約半年ぶりですね、最初読んだ時は今一つ物語に入り込めなかったので43、44を再読してから改めて読ませていただきました。
物語もいよいよ終盤といった感じですがかずさの企みがなんなのか春希の反応から察するにちょっとばかり危なかっしい事をやらかしそうです。三人の関係をちゃんと清算するには生半可なことでは駄目だとそれぞれが思ってはいるのでしょう。
その為に先ずかずさが何をするのか興味深いです。
次回も楽しみにしています。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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