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The Day After 46

「で、叶えたい望みはあの時口にしたものと変わってないのか?一番の望みはそれじゃないくせに、いいのか?」

「そりゃわたしの一番の望みは違うよ。でもそれを叶えるってどういうことなのか、あなたが一番知ってるでしょ?前にもそれは言ったはずだよ、わたしにそんなことできないって。」

この部屋に2人の声が響く

ここ、冬馬・北原邸のリビングのソファーに

3人がここに座った途端、かずさは一切の躊躇なく切り出した

あの帰国した春から口にしなかったことまでも口にして

秋の間は春希もかずさも日本にいなくて、こうして会うのは数日ぶりどころか数ヶ月ぶりなはずなのに
それを全く感じさせないような口ぶりで

2人と1人の話し合いが始まった

そのかずさに対する雪菜の答えは同じよう
時間を感じさせず 戸惑いもせず
答えを隠すことなくハッキリと返す

2人が自分のとこに来た時に
その表情をみた瞬間に
来るべき時が来たことに気づいたから

覚悟なんて、2人よりもよっぽど早く決めていたから

返す言葉に迷いも躊躇いもあるはずない

ただ あの時は触れずにいた部分にも触れて、言葉を返す

「きいたさ。でも一番は変わらないんだろ? 雪菜、お前の望みは春希の子供を産み育てること。それは変わってないはず、それこそ4年前からな。」

次に言ったかずさのセリフもやはり直球そのもの

今まで、夏までは敢えて触れずにいて、冬馬曜子からも触れるなと言われた部分

そこにさえかずさは触れた

触れなければいつまでたっても表面的なお話しにしかならないのだから

「・・・否定したとして信じるの?」

「信じられるわけないだろ。じゃなかったら婚約してるはずがないだろうし、雪菜ならそこまで考えていただろうし。」

「それならわざわざ聞かないでよ。それに、そこには前提条件が必要でしょ?」

「いるか?」

「いるよ!片親で色々とあったかずさが言っても説得力がないくらいに!」

対する雪菜だって負けず、率直に遠慮なしに答える
かずさに対して普段なら言わずにいた部分でさえも口にして、真っ向からぶつかっていく

「うちの母親があまりに常識はずれだからってのはあると思うけどな、そこは。少なくとも、一般的な母子家庭とは家はかけ離れてるとは思う。」

「なにもなければ、わざわざその選択肢を選ばないんだから、意味もなく自分から望んでわざわざそうなろうとなんてしないんだから、事情はそれぞれあるんだよ。そしてその事情に子供は影響を受けるのは避けられないじゃない。どうしたって父親がいない、知らないっていうのを背負わせることになるじゃない。もしかずさがそうでなかったら、あなたを知らずにいたのなら、あなたのいう選択をしてたかもしれないよ?けど、かずさを見てきたからそんなことできないよ!かずさ、あなたなら逆の立場になったとき、自分を重ね合わせた時、それをできたと思うの?」

「・・・分からない。でもしないとも言い切れない、あたしは不幸じゃなかったから。」

「それは結果論でしょ。高校の時のあなたにそれを言って聞くと思うの!?」

「思わないな、そりゃ。それでもあたしはその可能性は捨てなかったろうし、捨てられなかったと思う。・・・そこに可能性がある限り、あたしはそれを捨てることなんてできやしない、それくらい雪菜だって分かってるだろ。」

「確かに、あなたはそうかれもしない。でも、わたしには、わたしだけでなんてできない、できないの。」

2人は言葉をぶつけ合う
思いのまま、想いのまま
そこに春希が口を挟む余地なんてなく
静かに話し合いを聞くだけ
春希ができることは今はない

「それなら、望みはなんだ?なんだってわざわざあたしたちに連絡をよこした?」

「理由、知ってるでしょ。前にも言ったよね、わたしはあなたの師匠になるって。今のあなたたちじゃこれから先、絶対にうまくいかないもの。」

「また随分と不幸な予言だ。」

「だってあなたは家事を一切できないもの。それでうまくいくはずがないじゃない。あなたは母親に成れるの?かつてあなた自身が望んだような母親に。」

「・・・そんなの無理だ。あたしも昔は人並みの母親を望んだがあたしはとてもそうなれそうにはないからな。」

「そうでしょ?だからわたしが必要なんじゃない。」

「でもそれは雪菜が見つけた自分の役割で、言い訳でもある、あたしたちのそばにいるための。」

「そうだよ、言い訳だよこんなの。でも、必要なのも事実じゃない!それにこれは春希くんのためにも言ってるんだからね?かずさのためだけじゃないんだから。」

「それだって分かってる。でもそれならあたしから春希を連れて行けばいい、違うか?」

「それができたらとうの昔にそうしてるよ!できなかったんだから仕方ないじゃない!それにそうしたらかずさ、あなたはどうなるの!?あなたは独りで生きていけないでしょ!?」

「・・・実際、どうなんだろうな、あたしは。結局、そうなったことがないからなぁ。いつも誰かがあたしを助けてくれてたから。」

「そうしないとかずさは生きていけないからでしょ。あなたに自活なんて不可能だもの。そして、もし可能だとしても、できるようになるために、あなたがその才能を捨てることになるかもしれないなら、周りがそれを惜しんで手助けすると思う。」

「才能、か。本当にそんなものあるかも分かんないけど。」

「なかったらあんな風にコンクールで賞をとれないでしょ。あなた以外にもそれを求めていた人は沢山いるのに。」

「じゃあ、あたしがピアノを捨てたらどうなると思う?」

「わたしにそれを聞くの?あなたがもしピアノを捨てるなら、それは春希くんのため、そうでしょ?それを止めたのは誰だったと思ってるの。だから捨てたところで、こうしてあなたたちが2人でいることに変わるわけじゃない。・・・そこだけは自信もって言えるよ、それだけは。」

「・・・・・・お前、それ覚えてたのか?」

「ちゃんと記憶しいてるかと問われると怪しいけど、あの時の事はおぼろげに覚えてる。少なくとも、あなたがバカなことしようとして止めたことは確かだって。」

「雪菜が雪菜であるように、あたしはあたしってわけか・・・。」

「でもだからといって変わらなくていいってことじゃないからね。あなたが何も変わらなければ先はうまくいかないんだから。そうなった時、私は放っておけないもん。だってそこに私の居場所があるんだから。」

「結局、話はそこに戻るわけか。でも、あたしは北原かずさ、だぞ?それを変える気はない。」

「それを変えたくなかったら、変えなくて済むように努力する必要があるってこと、分かってる?あなたにある選択肢は二つ。どっちを変えるかを選ぶのはかずさだからね。」

「・・・ほんと、強情な奴だな、雪菜は。」

「それだけはあなたに言われたくないよ。誰よ?7年も遠くから願い続けていたのは、奏で続けていたのは。」

「それこそ今も歌い続けているやつもいるみたいだけどな。」

「「・・・・・・。」」

しばし、視線で互いを射抜き合いながら
その心の揺れを量り合う
揺れないと分かりながらも
その余地を探してしまう

「・・・結局、雪菜もあたしも相手が崩れることを見越してのセリフってことか、業が深いことだ。」

タメ息のように吐き出されたかずさのセリフは場の空気を揺らす

ここにいる三人誰もが抱える危うさがそこにある
とごか自己犠牲に似たエゴが
三人の中にあり
その特異さが三人をまた結びつけてもいる

「どっちかってことでしょ。私が関わらなければあなたたちが倒れるし、私が関われば私が倒れる。その選択を相手が倒れないように選びあっている、でもそれは自分の願いのために、望みのために、自分勝手に選んでるって言いたいんでしょ?」

かずさは無言で同意する
まさにそういうことだ
そしてだから話は動かない
願いは簡単に他人に動かされるようなものじゃない

簡単に動くなら、こうしてここにいない

こんな物語は生まれちゃいない

「余地があるなら、私はそこに入り込むよ?それが嫌なら入り込めないようになってよ。あなたが願った『母親』になってみなさいよ。」

「言いたいように言ってくれるな、ほんと。」

「そのために今日あなたたちはここに来たんでしょ?私の考えを、想いを、願いを全部言わせる為に。」

「そうしなきゃ繰り返すことになるからな。また再びの冬が来るかと思うと、な。」

「何かが変わらなければまたになるだろうってわたしも考えた。だから、こうしてあなたと意見をぶつけ合ってるんじゃない。」

「なるほどな。・・・・・・なら、最終確認だ。雪菜は変えたんだな?」

「うん、変えたよ。だから、あなたは何を変えるのか、決めてください。」

「・・・わかった、答えを出しておく。」

互いに 互いの瞳から目をそらさず 言葉を交わす

互いが揺るがないことを確かめ合いながら

意志を伝え合う

雪菜は変えたことを伝えて

かずさに何を変えるのかを問い


かずさは変える意志があることと

何を変えるかに対して考えがあることを応え


春希は静かにかずさの隣で

話し合う2人を見守る


三度目の冬がやってくる―――――


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

大部分はかなり前から出来上がっていたのですが、推敲をし続けてキリがない状況になってきたので、一端切り上げて公開と致しました。雰囲気やセリフなど、もう少しこう、という思いがあるのですが、一つ訂正するとあっちもこっちもになり、それを繰り返した挙げ句、一周回るようなことになってきた感があるので、これにてということです。
頭の中にある風景をどう文字だけで表現できるか、というのはやはり難しいです、ハイ。

そんなわけで長編の方を公開です。
続きもボチボチできているのですが、また推敲で四苦八苦しそうな未来が見えますが・・・
が、頑張ります。




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危ういバランス

更新お疲れ様です。
物語も遂にクライマックス?を予感させる展開ですね。かずさも雪菜もかつての様には戻れないと分かっていますが、かずさは雪菜との付き合いは一定の距離を置きたいと思っているのとは反対に雪菜はできる限り昔に近づけたいと思っていて今のところ話は平行線ですが次回で今回は殆ど発言していない春希がどう絡んで来るのかとても楽しみですが自分としてはこの物語が終わって欲しくない気もしてちょっと複雑な気持ちです。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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