夏の朝 少し寒い朝

ウィーンの朝は寒い

海沿いの平野部とは違い、川沿いの山間部に位置しているという地形もだが

緯度も高く 夏といっても猛暑とは縁遠い所である

当然、、最低気温も低く

何せ7月なのに15度を下回ることさえあるし、基本的に20度以下である

そんな涼しいなんて表現では済まなくて、朝は冷え込むというレベルのウィーンの朝

その朝を二年の間過ごしてきた春希と 七年も過ごしていたかずさ

夏の朝は冷え込むことを知る2人

だから、冷え込む朝は

半袖では寒さを感じるような朝の冷気は

どこかウィーンを思い出させる

風の冷たさと 静寂の中の自然の音が

かつて2人がいた 2人だけでいたあの頃を

思い出させる

そしてその記憶は必ずしも幸せに満ち足りていたものではない

朝、夢から覚めて 隣を見れば

涙にぬれた頬が目にはいることは

よくあることでなくとも、珍しいことでもなかった

東京を離れた際に払った代償と痛みが

2人を異国の地でも 苛み続けた

特に、夜は 夢は 逃げられるものじゃない

夜が明けて 日が昇りて

目が覚めたころにやってくる朝の冷たさが 

夢の余韻を引きずる2人の心を

より冷たく突き刺すから

2人でそれを必死に暖めあったことを

2人とも忘れられるわけがなくて

朝の冷たさは 夏の朝の冷たさが

そんな狭くて 幸せで 苦しかった 世界の記憶を

思い出させるんだ

けれども、それは変化の兆しでもある



「あたしたち、何か変われたかな?」

「変わってる途中なんだと思う。行きつく先がどこかはまだわからないけど、変わり始めていることは確かだ。」



だって、今、ウィーンを振り返っている

過去を見つめている

この二つが紛れもない変化の印


「変化、か。」

それでも 思ってしまう

罪は変わることなどあるのだろうか?

「そりゃ、変わらないものもある。俺たちには変えられないものもある。」

春希もそこは理解している

過去を変えることなどできはしない

それによって生まれた罪も

その罪の意識も・・・



「今朝は、・・・冷えるな。」

窓から入ってくる冷気が 

冷たく乾いた空気が

変わらないものが 変わっていないんだと

冷酷に告げているようで

あの、涙がこぼれた朝の様で


「寒いか?かずさ。」

だから、春希がかずさを抱き寄せる

変わらない、温め合う方法

「少しだけ、だ。あっちよりは寒くない。・・・不思議だけど、な。」

最後は独り言かのようにポツリと漏れた本音だが

春希も同じことを感じている

少しだけなんて、強がっていることも

それでも、ウィーンほど冷たく突き刺さってこないことも

両方を 春希も 感じている

「多分、それこそが変わってきているからなんだって。」


感じ方は変わる

世界が変わることと一緒に

逃げるからこそ、罪の意識は膨れ上がり 霞むことはない

だからといって、向き合ったからと 消えるものでもない

寒い朝を知った原因を作ったのは ほかでもない2人

「最低の純愛」がもたらしたこと

夏が来たのに 夏が来ているのに

2人にとって特別の季節が来ているのに

朝の寒さを知ってしまった2人は

もう、その特別さに身を任せて

2人だけの季節に浸ることなんてできない

あの頃の様にいつも隣で互いだけを考えて

互いだけを見ていた頃には

その頃の2人とは 変わってしまったから

それでも、手に入れたものを守るために

これからもこうしていくために

春希はかずさを抱きしめ

かずさは春希を抱きしめ

夏の 冷たい 朝を―――



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
PCの不調と、また全然ジャンルの違う文章を書いていために、こうして遅れに遅れて6月未更新に・・・

そして今回は短編の季節編になります

夏の朝、というわりには結構肌寒い感じがする最近ですが
その寒さを感じた時に、こう記憶を刺激されるんだろうなぁという所から生まれたものです
東京にいたところで、罪の意識がなくなるわけでもない2人の苦悩を少し書いてみたかった感じですね

なお、先日小説版をお借りできまして、ようやく全巻ちゃんと読めました
感想は言い出すとかなり長くなるので割愛するとして、
とりあえず小春アフターの短編は見まして、フラグ回避ってなるほどと思いました
むしろ、勝手にフラグ立ててすみません・・・って気分になりましたね(笑)

ラスト巻のアフターは、うん、いいですね 
是非、その先の光景を、と思うシーンですよね
人数は少なくとも 親子が揃うかと思うと感無量なシーンかと思います
そういったアフターもいいなと思ってみたり
などなど

そんな感じで小説版から栄養分もらって、
そしてもう一度他のルートをプレイしてさらに肥やしをもらってこうしてまた書いております
PCの不調が不安定要因でして、本編プレイも少し影響があったせいで余計に遅れたなんてことはあるんですが
また次も今月中に更新する予定です

そう書いておけばする・・・はず
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ウィーンの風景

更新お疲れ様です。
朝この話くらい涼しかったら良いな……なんて思うくらい暑いですね
二人にとってはそうとばかりも言えなそうですが

あまり関係ないけどウィーンの二人の家はハイリゲンシュタットの丘にあるのかなと思ってます。以前音楽都市歴訪という番組で紹介されていたハイリゲンシュタットからの眺めがエピローグの部屋から漏れ見える夜景に似てるかなと

ミニアフターの前振り

更新お疲れ様です。
最初は本編の感想を書いたのですが以前似た様なものを書いた気がして辞めました。
代わりと言っては何ですが小説版最終巻のアフターについてですが、この話の続きがその後出たミニアフターなんですよね。
私も最初読んだ時、続きが気になりましてミニアフターの内容がその続きと知った時は嬉しかったですね。
次回の更新は今月中を予定という事で期待していますが無理はしないで気をつけてください。
プロフィール

海雪 海辺月

Author:海雪 海辺月
現在、White Album2 SS、特に冬馬かずさ SSを執筆がメインです。
目次はカテゴリーの未分類においてあります。
Eメール:umiyuki_4s@yahoo.co.jp
@を半角にしてください
メアド載っけてないことに今さら気づきました・・・

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